山本産婦人科(三重県津市)の緊急避妊ピル(アフターピル)・低用量ピル・コンドーム・子宮内避妊器具(IUD) についてのページです。

避妊について

緊急避妊ピル

★緊急避妊ピルって何ですか?

妊娠を望まないのに無防備な性行為をもったり、コンドームが破損・脱落したり、レイプを受けたりして、なんとか妊娠を避けたい場合に緊急避難的に用いられる避妊薬です。アフターピルとも呼ばれています。

★妊娠反応が出たのですが無理ですか?

無理です。あくまでも妊娠が成立する前の避妊法であって、着床が成立した後の受精卵や胎芽を“おろす(中絶する)”ものではありません。したがって、妊娠反応が出た場合は服薬の対象となりません。

★いつまでなら可能ですか?

性交後72時間以内(3日以内)です。それ以上経過していればあきらめて下さい。

★具体的な方法と特徴は?

現在最も効果的であると考えられているのは、緊急避妊ピルとしてエチニルエストラジオールとノルゲストレルというホルモン剤を用いる方法(Yuzpe法)で、欧米では数種類が発売されています。日本では認可された薬剤はありませんが、経口避妊薬として発売されている薬を代用することができます。通常、中用量ピルであるドオルトンまたはプラノバールが使用され、1回2錠、12時間間隔で2回服用します。
性交後72時間(3日)以内:緊急避妊ピル2錠服用
その12時間後:緊急避妊ピル2錠服用

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★ほんとうに避妊できるの?

100%避妊効果を期待できるものではありません。正確に服用したとしても2〜3%の失敗率(妊娠率)があるとされています。

★妊娠しちゃった場合は問題ないですか?

緊急避妊ピルを服薬したからといって、赤ちゃんの奇形発生率が高くなることはありません。ただし、妊婦さんすべてが平等に負う先天異常のリスクは当然回避できるわけではありません。

★効果があったかどうかはすぐわかるの?

服用後すぐに効果がわかるわけではありません。生理が来て初めて効果があったとわかるわけです。生理は予定日より早くなることが多く、予定日ちょうどに生理が来た人と合わせると、その頻度は80%以上になるとされています。したがって、生理が予定日から1週間以上遅れる場合は妊娠の可能性を一応考えて下さい。また、1週間以上遅れてから出血した場合は生理と思っていたのが、実は胎盤徴候流産徴候であるという可能性も否定できません。いずれにしろ産婦人科を受診して下さい。

★どうして避妊ができるの?

服薬した時期が月経周期のどのあたりかによって作用機序は異なると考えられます。(1)排卵抑制、(2)頚管粘液への影響(粘度上昇)、(3)間脳・下垂体への影響、(4)卵子の卵管内輸送時間への影響、(5)子宮内膜への影響などが知られていますが、基本的には子宮内膜に働いて着床を妨げると考えてよいでしょう。つまり、卵管(膨大部)で受精が起こり、受精卵が約6日間かけて子宮内に運ばれてくる間に、急いで子宮内膜に着床に不都合な状況を作り出す方法と理解すればよいでしょう。

★副作用にはどんなものがあるの?

むかつき・嘔吐・頭痛・めまい・乳房痛・腹痛・むくみ・下痢・不正性器出血などが出現することがあります。特に“むかつき”はかなりの頻度で認められますが、通常24時間以上続くことはありません。牛乳やスナックと一緒に服用すると“むかつき”をある程度予防できるでしょう。
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★お薬を飲んでから吐いちゃったんですがどうしたらいいですか?
飲んでから2時間以内に吐いた場合は、念のためもう1度飲み直した方が無難です。
2時間以上経過してから吐いた場合は、お薬はほぼ吸収された後と考えてそのまま様子をみて下さい。

★経口避妊薬の代わりに毎回使えませんか?

この方法はあくまでも緊急避難的なものであって、しばしば頻回に用いることは妊娠率(失敗率)からも副作用の点からもすすめられません。継続的な避妊を希望の場合は、低用量ピルの使用をお勧めいたします。

★その他の注意点はありませんか?

1) 排卵期前に服用した時は、排卵を抑制する場合と排卵を遅らせる場合があると報告されています。したがって、緊急避妊ピルを飲んだからといって、その後も避妊効果が持続すると考えるのは危険です。次の生理が来るまで性行為を持つのはかまいませんが、必ず避妊を徹底して下さい。
2) 血栓性静脈炎・乳癌・脳血管障害・子宮外妊娠の既往などがある人はピルの服用は控えた方がよいでしょう。
3) クラミジアやエイズを始めとした性行為感染症を予防できるわけではないので、性行為感染症のリスクが高いセックスであった場合は、産婦人科医に相談して下さい。
4) 最近では世界各国で承認され、世界保健機関や国際家族計画連盟なども推奨する避妊法となってきていますが、日本ではまだ未承認のため、あくまでも緊急避難的措置と考えて下さい。今後同じ事を繰り返さないよう、産婦人科医と相談の上、自分にあった継続的な避妊法を選択して下さい。
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低用量ピル

★低用量ピルって何ですか?

経口避妊薬が開発された当初は、大用量ピルといって大量のホルモン剤が用いられていましたが、次第に減量しても同様の避妊効果が得られることがわかり、副作用を軽減するためにも、“より少ない量で同じ効果”を求めて開発が進められてきました。
その結果、大用量ピルが中用量ピルとなり、現在ではさらに低用量ピルへと進化してきています。低用量ピルには、同じ量の薬剤を21日間服用する1相性ピルと、薬剤の量を2段階にして、前半と後半で異なる用量の薬剤を服用する2相性ピルと、薬剤の量を3段階にして、3種類の異なる用量の薬剤を服用する3相性ピルがあります。
また服用日数によって、21日間服用型28日間服用型の2種類がありますが、いずれもホルモン剤の服用期間は同じ(21日間)であって、28日間服用型の場合はホルモン剤21日分にホルモンを含まない偽薬(プラセボ)7日分が追加されているにすぎません。
★どのようにして避妊効果が得られるのですか?
ピルを飲むとどうして避妊できるかについては、ピルに含まれている合成エストロゲンと合成プロゲステロンが、視床下部や脳下垂体に働いて、 FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)の分泌を抑制し、 その結果排卵が抑制されることに基づいています(成熟女性におけるホルモン動態を参照して下さい)。その他にも、子宮内膜の発育抑制・頚管粘液の性状変化・卵管の卵子輸送能の変化も避妊効果の発現に関与しているとも言われています。

★誰でも服用できるのですか?

誰でも服用できるというわけではありません。次のような問診票に基づいて、投与禁忌つまり“服用してはいけない人”でないかどうかが判定されます。

※PDFファイル:閲覧にはAdobe Readerが必要です。
右記サイトよりダウンロードしてください。

医学的に禁忌となる疾患がない限り、生殖可能年齢のいずれの時期であってもピルの使用は可能です。若年女性の場合、ピルの処方に両親の承諾は必要ありません。
35歳以上で喫煙している人では、ピルを服用することによるリスクのほうが利益(避妊効果)を上回っているため、お勧めできません。特に1日15本以上の喫煙者では服用禁忌となっています。
体格指数(BMI)が30.0を上回る人については、静脈血栓寒栓症のリスクが高いため、ピル以外の避妊方法が望ましいでしょう。
静脈血栓寒栓症・心筋梗塞・心血管疾患・心弁膜疾患・脳卒中・乳癌・糖尿病・肝硬変・肝腫瘍などに罹っていたり、既往のある人では服薬禁忌と考えてください。
年齢にかかわらず、焦点性の偏頭痛のある人では、ピルの服用のリスクの方が利益(避妊効果)を上回っているため、お勧めできません。
血圧測定で収縮気圧が140mmHg以上または拡張期圧が90mmHg以上の人では、ピルの使用はお勧めできません。特に収縮期圧160mmHgあるいは拡張期圧が100mmHgを超える場合は服用禁忌となっています。
近々手術を受ける予定のある人も術後の静脈血栓寒栓症のリスクが高くなるので服用禁忌となっています。

    他の薬剤との相互作用

    副腎ステロイドホルモン・三環系抗うつ剤などは低用量ピルによって作用が増強される可能性があります。>
    リファンピシン(抗結核剤)、フェノバルビタール(睡眠剤)、テトラサイクリン(抗生物質)、ペニシリン(抗生物質)などは低用量ピルの効果を弱める可能性があります。
    したがって、これらのお薬を服用している方が、ピルを希望される場合は、注意が必要です。

    授乳中の場合

    母乳中へピルの成分(性ステロイド)が移行することやピル自体が乳汁分泌を抑制することから、他の避妊方法を選択すべきです。

ピルの服用って安全ですか?

ピルって本当に安全なのかしら?と疑問に思う人もいると思います。
喫煙していない健康な人がピルを服用した場合の危険度を1として、日常生活や行動の危険度と比較してみると以下の表のようになります。

ピル服用と日常生活・行動におけるリスクの比較

日常生活・行動 10万人の女性が1年間に死亡するリスク
ピル服用時
妊娠・出産
家庭内の事故
交通事故
喫煙
167
(Guillebaud,1998)

この表からわかるように、ピルの服用のリスクは、妊娠したり出産したりする場合よりもはるかに低く、また喫煙とはとうてい比較にならないくらい低いことがわかります。したがって、服用禁忌のない健康な非喫煙者では、ピルの服用は安全と考えてよいでしょう。
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★具体的な薬剤の選択と服用方法は?

    1相性ピル・2相性ピル・3相性ピルの選択について
    多相性ピル(2相性ピル・3相性ピル)は薬剤の配合比をきめ細かく調節することによって、(1)服薬中の出血(破綻出血と呼びます)の頻度を下げること、(2)できるだけ月経(消退性出血)が毎回欠かさず来るようにすること、および(3)服薬量を最小限にすることを意図して開発されたものです。しかし、臨床的には多相性ピルの方が1相性ピルに比べて明らかに優れているというデーターはなく、いずれのタイプを選択しても大差はないものと考えて下さい。なお日本では、11製剤の低用量ピルが販売されていますが、1相性が1製剤、2相性が0製剤、3相性が10製剤となっています。

    21日服用型・28日服用型の選択について

    いずれのタイプもホルモン剤の服用期間は同じ(21日間)であって、 28日間服用型の場合はホルモン剤21日分にホルモンを含まない偽薬(プラセボ)7日分が追加されているにすぎません。
    28日服用型の場合は常に毎日服用するという習慣付けができるため、忘れっぽい人に向いていると思います。21日服用型の場合は、何も飲まない期間が1週間でもあった方が気分的によいと思う人に向いていると思います。いずれにしろ、避妊効果に変わりがないわけですから、好みで選べばよいでしょう。

    具体的服用方法

    ◆いつから飲み始めるの?
    飲み始めをいつにするかによって2つの方法があります。薬剤の添付書類には、服薬開始を月経開始日とするものと月経開始後最初の日曜日とするもの(Sunday pill)がありますが、両者の違いは製剤による相違ではなく、単に服用開始日の時期の違いと理解して下さい。生理(消退性出血)がウイークエンドに来ない方がよい人は、飲み始めを月経開始後の日曜日(Sunday pill)にすればよいでしょう。
    つまり、月経周期の1日目から開始するのが一般的ですが、5日目以内に服薬を開始すれば他の避妊法を併用する必要はありません。
    また、妊娠している可能性がなければ、いつからでもピルの服薬を開始することができます。ただし、最初の7日間は他の避妊法を併用する必要があると考えてください。
    中絶や分娩後の場合
    人工妊娠中絶後や妊娠初期流産後に避妊を希望する場合は、手術あるいは流産後より7日以内にピルを飲み始めます。
    分娩後・妊娠中期流産後・早産後などに避妊を希望する場合は、21日間が経過してから飲み始めます。3週間の間隔をあけるのは、血栓症のリスクを避けるためです。
    ◆何日間飲むの?
    21日服用型であれば、21日間連日服用し7日間の休薬の後、次の周期の服薬を再開する21−7−21−7−の繰り返しとなります。日本では、4製剤が販売されています。 もちろん、7日間の休薬期間中も避妊効果は持続しています。
    28日服用型であれば、28日間服用後、翌日から引き続いて次の周期の服薬に入り、妊娠を好まない期間中は休薬することなくエンドレスに飲み続けます。日本では、7製剤が販売されています。
    月経(消退性出血)を望まない場合には、3周期にわたって連続的に服用することができます。
    ◆どれくらいの頻度で受診する必要があるのですか?
    初回服用後に特に問題がなければ、多忙の方には数周期分をまとめて処方することもできます。ご希望があればお申し出ください。もちろん、不安なことや問題があればいつでも受診してお尋ねください。
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★飲み忘れたのですがどうしたらいいですか?

原則として、ピルは最も忘れにくい一定の時間を選んで服用してください。
服用が遅れたとしても、12時間以内のズレにとどめるようにしてください。
1日だけ飲み忘れた場合: 気づいた時点でただちに飲み忘れた分を服用し、その日の分もいつも通り服用して下さい(つまり飲み忘れに気づいた日は1日2錠飲むことになります)。服用すべき時間から12時間以上が経過した場合も同様に1日2錠を服用してください。

2日以上飲み忘れた場合: 服用を中止して、他の避妊方法を用いて下さい。次の生理を待って服用を再開することになります。あらためて、お薬を取りに来てください。

★ほんとうに避妊できるの?

パール指数といって妊娠率(避妊失敗率)を示したデーターでは、およそ0.2〜0.3%となっています。妊娠率(避妊失敗率)がゼロでない理由としては、
(1) 下痢や嘔吐でピルの吸収が悪くなることがある。
(2) 他の薬剤(抗結核剤・睡眠剤・抗生物質など)を飲んでいたために、ピルの効果が弱められることがある。
(3) つい飲み忘れをすることがある。
などが考えられます。

したがって、ピルの避妊効果は99%以上とされているものの、次のような点に注意が必要です。
(1) 下痢や嘔吐が続く場合は、他の避妊方法も併用してください。
(2) ピルの効果を弱める可能性のあるお薬を飲む場合は、他の避妊方法を併用してください。
(3) 飲み忘れをしないためには、一定の時間を決めて服用するようにしてください。
(服用時間のズレは最大12時間以内に!)

★不快な症状や副作用はないの?

    服薬中の不正出血(破綻出血)

    服薬中に少量の性器出血をきたすことがあります。飲み始めの周期が1番多く、服薬を続けていくとしだいに少なくなっていきますから、心配しないで下さい(第1周期:13〜33%→第4周期:4〜5%)。避妊効果に影響はありません。

    生理がこなくなる

    飲み始めの周期に生理が来ないことが1番多いのですが、しだいにその頻度は下がってきます。生理が来なくても次の周期の服薬を指示通り開始して下さい。ただし、生理が2周期連続して来ない場合は、妊娠反応をチェックしますから来院して下さい。

    その他の副作用

    胃腸症状(嘔気・嘔吐)が主な副作用ですが、服用を続けていくとだんだん楽になっていきます。時には、頭痛・乳房痛・倦怠感などが出現することもあります。 また、ホルモン依存症の副作用以外にも、高血圧のリスクの増加、耐糖能の低下(インスリンの感受性の低下)、ポルフィリン症、肝障害(胆汁うっ滞性障害)、脂質代謝異常(高トリグリセリド血症)、角膜厚の変化(コンタクトレンズの視力・視野の変化および装着時不快感)なども報告されていますが、いずれも重篤なものではありません。

    コーヒーカップ では体重増加はどうでしょうか?
    ピルの服用にあたり、多くの女性が気がかりなのが「ピルを飲むと体重が増えてしまうのでは?」ということですが、多数例の解析の結果(Cochrane Database,2003)、ピルと体重増加との間に因果関係のないことがわかっています。したがって、美容上の心配でピルを敬遠する必要はありません。

    ※その他のピル服用のリスク
    1. 静脈血栓寒栓症
      ピルの服用により、静脈血栓寒栓症のリスクは3〜5倍に増加します。ただし、実数で比較すると、ピルを服用していない人の静脈血栓寒栓症のリスクが女性10万人当たり年間5例であるのに対し、ピル服用者のリスクは、女性10万人当たり年間15〜25例となるという意味であり、このリスクの実数自体は妊娠時の静脈血栓寒栓症のリスク(女性10万人当たり年間60例)よりもはるかに低いといえます。
    2. 脳梗塞および脳出血
      喫煙をしていない健常者がピルを服用すると、脳梗塞のリスクは2倍となるが脳出血のリスクには差がないとの報告があります。ただし、脳梗塞の実数の増加は極めてわずかと言えます。また、ピルの服用により脳卒中(脳梗塞・脳出血)による死亡率自体の増加はないとされています。
    3. 心筋梗塞
      喫煙をしていない健常者がピルを服用しても心筋梗塞のリスクは増加しないとされています(相対リスク:0.9)。
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★定期検査は必要ですか?

毎月の請薬時に問診・血圧測定・体重測定がなされます。従来、厚生労働省により義務付けられていた半年毎の血液検査は緩和されてはいますが、服薬中に何か問題がある場合は、やはり血液検査も受けたほうがよいでしょう。また、少なくとも年1回の子宮癌検診・乳癌検診も必要と考えてください。
特に発癌との関連については、以下のことを理解しておいて下さい。

    卵巣癌

    低用量ピルを服用すると卵巣癌のリスクは低下し、1年以上の服用で50%、10年以上の服用で80%低下するとされています。

    子宮頚癌

    ピルを服用している人では、おしなべて子宮頸癌のリスクが1.3倍となり、服用期間が長くなればなるほど高くなり、8年以上では2.2倍になるとされています。
    一方、服用中止後は、時間が経過すればするほどリスクは低下し、8年以上経過すれば1.1倍となります。ピルを服用している人では、 HPV陽性率が高いため、ピル自体がリスクを高めているのではなく、HPV感染により発症している可能性が考えられます。また、子宮頸癌のうち、子宮頚部腺癌の増加にピルが関連することも示唆されつつあります。
    したがって、年1回程度の子宮癌検診を受ける必要はあると考えてください。

    子宮体癌(内膜癌)

    ピルを12ヶ月以上服用すると、子宮体癌のリスクが50%低下するとされています。
    子宮体癌の死亡率もピルの使用によって低下し、しかもこの効果は5年後も認められ、使用中止10年後まで持続するとされています。

    乳癌

    ピルの服用により乳癌になるリスクが増加するとの報告もありましたが、その後の研究により乳癌リスクの増加は否定的(相対的リスク:1.0)であり、服用期間にかかわらずピルによる乳癌の死亡率の増加は認められていません。したがって、日本産科婦人科学会の低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版:平成17年12月)では「乳癌の家族歴の有無にかかわらず、ピルの使用によって乳癌リスクが増加する可能性は小さい」と指導することになっています。
    ただし、一般の人と同様に成人病検診の一環として年1回程度の乳癌検診を受けるべきであることは言うまでもありません。
    なお、厚生労働省は、2004年3月より視診・触診のみの乳癌検診を廃止し、40歳以上はマンモグラフィーとの併用を決め、2004年度から全市町村で受診できるように求めています。乳癌の死亡率が減少に転じている米国では2年以内のマンモグラフィーの受診率が70%を超えているのに対し、日本では2.1%(2002年、50歳以上を対象として算出)と極めて低いことに、厚生労働省がやっと重い腰を上げた状況です。したがって、40歳以下の人でも乳癌検診を受けるのであれば、必ずマンモグラフィーを含めた検診を受けるようにして下さい。マンモグラフィー検査可能施設については、『マンモグラフィー検診精度管理中央委員会』のホームページ(http://www.mammography.jp)が参考になると思います。なお、病院でのマンモグラフィーの窓口は産婦人科ではなく、外科あるいは放射線科がほとんどですから、ご注意下さい。

    大腸癌

    ピルの服用によって大腸癌のリスクが低下(相対リスク:0.82)することが知られていますが、予防効果があるかどうかについては明確になっていません。

    稀におこる癌

    原発性肝癌はまれであるものの、使用期間次第ではピルによってリスクが増加するとされています。悪性黒色腫については、ピルとの関連がないとされています。絨毛性疾患に罹患した人では、hCG(絨毛性ゴナドトロピン)の濃度が正常域に戻るまではピルの使用を控えるべきとされています。
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★どんな場合に服用を中止しなければならないのですか?
静脈血栓症・心筋梗塞・ホルモン依存性腫瘍・肝胆道系障害・糖代謝異常・脂質代謝異常などが出現すれば、当然服薬を中止しなければなりません。その他、定期検査で異常値が出た場合も他の避妊法への転換が必要です。

★服薬を止めたら妊娠できますか?

ピル服用後に無月経となる頻度は、ピルを服用していない人における無月経の頻度と差がありません。つまり、ピル中止後は、内分泌環境が元の状態に復帰して、問題なく妊娠できると考えて下さい。

★その他の注意点はありませんか?

性行為感染症に注意して下さい。ピルの使用によって避妊に成功しても、引き換えに性行為感染症にかかってしまえば、やはり問題でしょう。性行為感染症の予防の基本はあくまでもコンドームの使用であることを認識すべきでしょう。

★その他のピルの利点について教えて下さい。

    低用量ピルの副効用について

    ピルには避妊効果以外に種々の利点(副効用)があり、それぞれの病態の治療薬として脚光を浴びつつあります。避妊の必要性のない人にとっては、”経口避妊薬”という名前に抵抗を覚えるかもしれませんが、病状で苦しんでいるよりは一度ピルを試してみてはいかがでしょうか(ただし、ピルの使用にあたっては、保険適用がないことが難点ですが……)。

    月経困難症(生理痛)
    無作為二重盲検プラセボ対照試験により、ピルを使用すると月経時の痛みが有意に軽減されることがわかっています。
    過多月経(月経の量が多い)
    2周期を超えてピルを使用すると、月経血量が43%減少するという報告があります。
    また、月経期間が長い場合(過長月経)や月経不順にも効果が期待できます。
    子宮内膜症
    性交痛や月経時以外の痛み対する緩和効果は、他の子宮内膜症の治療薬と同程度であることが示されています。また、最近では、7日間の休薬期間を取らずに3〜6周期連続してピルを服用し続ける長期療法が子宮内膜症や月経困難症に好影響を及ぼすとの報告もあります。
    卵巣嚢胞
    ピルを服用している女性では、機能性卵巣嚢胞や良性卵巣腫瘍の発生率が低いことが明らかになっています。
    骨粗鬆症
    40歳以上でピルを使用すると閉経後の大腿骨頚管骨折の発生頻度が有意(25%)に低下します。
    にきび(尋常性ざそう)
    ピルの使用によってにきび症状が有意に軽減することが知られています。
    関節リウマチ
    ピルの使用によって、間接リウマチの発生率は30%低下するとされています。
    良性乳房疾患
    ピルの服用によって、良性乳房疾患の頻度も低下することが知られています。

    ピル服用の利点(副効用)についてのまとめ

    疾 患   発生頻度
    月経困難症
    過多月経
    子宮内膜症
    貧血
    良性乳房疾患
    子宮外妊娠
    機能性卵巣嚢胞
    良性卵巣腫瘍
    子宮体癌
    卵巣癌
    大腸癌
    骨粗鬆症
    にきび
    関節リウマチ













    日本産科婦人科学会編:
    低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン (改訂版、2005)
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その他の避妊方法について

コンドーム

日本において一番普及している避妊方法です。毎日新聞社人口問題調査会による2000年の調査結果では、コンドーム使用率は既婚夫婦で75.3%、未婚女性で93.4%となっています。
メリット--- (1)
(2)

(3)
正しく使用すれば失敗率は約3%で、比較的高い避妊効果が得られます。
エイズなどの性行為感染症の予防効果があり、世界的にもコンドームのメリットが見直されてきています。
HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染機会が減ることから子宮頸癌の発症率が下がるものと考えられます。
デメリット- (1) 男性主導型の避妊方法なので、男性が使用法をよく理解して協力的でないと失敗率が高くなってしまいます。

子宮内避妊器具(IUD:Intrauterine Device)

子宮腔内に小さな器具を挿入して、受精卵の着床を阻止したり、子宮腔内に到達する受精卵数を減少させることによって避妊効果を得る方法です。避妊効果はピルに次いで高いとされていますが、薬剤を付加していない非薬剤付加型(FD-1, Lippes loop, Saf-T-Coilなど)と銅やプロゲステロンなどの薬剤を付加した薬剤付加型(ノバT380,ミレーナなど)があります。

    ★どんなメリットがありますか?

    (1) 避妊効果がピルに次いで高く、安全性も高いとされています。
    (2) 1度挿入すれば、性行為のたびに避妊について考える必要がなく、ムードを壊すようなことがありません。また、比較的長期間にわたって有効性が持続します。
    (3) 男性の協力がなくても、女性の意志のみで避妊が可能です。
    (4) ピルの服用が望ましくない肥満・高齢・ヘビースモーカー・授乳中の女性でも使用が可能です。

    ★どんなデメリットがありますか?

    (1) 受診して挿入を受ける必要があり、挿入の際に多少の疼痛や出血をきたすことがあります。
    (2) 自然脱出の可能性があり、脱出に気づかないでいると妊娠してしまいます。また、装着に問題がなくても稀に妊娠することもあります。失敗率は100人の女性が1年間装着して3〜5人が妊娠してしまう程度と考えて下さい。
    (3) 挿入後に不正性器出血・疼痛・月経量増加などをきたすことがあります。

    ★だれでも使用できますか?

    次のような人には使用できません。
    (1) 妊娠の疑いがある場合
    (2) 骨盤内感染症のある場合(腟炎のある場合は、挿入は治療後に延期されます)。
    (3) 過多月経などの月経異常や不正性器出血を繰り返している場合
    (4) 子宮筋腫・付属器腫瘍・婦人科悪性腫瘍などがある場合
    (5) 子宮に形態異常のある場合(子宮奇形・著しい位置異常など)
    (6) 出血傾向(出血性素因)がある場合
    (7) 重篤な全身性疾患のある場合
    また、ティーンエイジャーを含む未婚の人や結婚していても将来妊娠・分娩を希望する未産婦の人では、異物を挿入する本法を避け、他の避妊法を選択することが望ましいでしょう。

    ★いつ挿入するのですか?

    月経開始から7日以内が適当な挿入時期です。この時期であれば、妊娠の可能性が否定でき、子宮頚管が弛めでIUDを挿入しやすい利点があります。
    人工妊娠中絶術後に挿入を希望される場合は、次回月経開始から7日以内が適当です。
    ピルの服用からIUDに切り換える場合は、服用終了後の月経(消退性出血)開始から7日以内が適当です。
    分娩後に希望されるのであれば、脱出を避けるため産褥2〜3ヶ月後が適当です。

    ★痛いのですか?

    昔のIUDは挿入に頚管拡張が必要でしたが、現在のものはその必要がなく、多少の痛みは否めませんが、アッと言う間に終了しますからご心配なく。もちろん、麻酔の必要はありません。

    ★挿入後の注意点は?

    挿入後1週間以上にわたり出血や痛みが続く場合や発熱がある場合などは必ず受診して下さい。
    IUDが正しく装着されているかどうかを確認しますから、次回月経後に受診して下さい。
    その後異常がなければ、6ヶ月〜1年毎に受診して下さい。
    月経持続日数の延長や月経出血量が増加する可能性がありますが、6ヶ月ほどで徐々に落ち着きますから経過をみて下さい。

    ★妊娠しちゃったらどうなるのですか?

    避妊効果はピルに次いで高いといっても100%ではありません。100人の女性が1年間装着したとして、3〜5人の人が妊娠してしまうのは否めない事実です。この場合、妊娠の継続を希望されるのであれば、胎児への影響はないと考えられますので、心配しないで下さい。ただし、切迫流・早産には注意が必要です。
    ★いつ交換したらいいの?どんな場合に抜くの?
    交換時期については規定がありません。長い間装着しておくと抜去困難となる場合があるため、2〜3年(ノバT380では5年)で交換している施設が多いようです。
    骨盤内炎症が起こったり、不正出血が続く場合は抜去することになります。

    ★抜去は簡単ですか?

    簡単です。通常、糸が子宮口から見えているので、糸を引っ張れば簡単に抜けます。痛みもほとんどありません。

その他

女性用コンドーム・ペッサリー・殺精子薬剤・オギノ式などもありますが、失敗率等からあまりおすすめできません。
日本では未承認で今後使用される可能性のあるものには、プロゲスチン皮下埋め込み剤(Norplant, Jadelle, Implanon)やプロゲストーゲン注射(Depot Provera)などがあります。