山本産婦人科(三重県津市)の子宮内膜症と子宮腺筋症についてのページです。

子宮内膜症と子宮腺筋症について

子宮内膜症

◆どんな特徴があるの?

子宮内膜症は、子宮の内腔以外の場所に子宮内膜やそれによく似た組織が発育し、悪性ではないのに増殖や浸潤を起こし、周囲の組織と強い癒着を作る病気です。
子宮内膜は女性ホルモンの作用により周期的に変化し、月経という消退性出血をきたしていますが、内膜症の病巣でもエストロゲンの作用を受けて同じような周期的変化、つまり増殖剥離出血が繰り返されていて、徐々に病状が進行するものと考えられています。卵巣ではチョコレート嚢胞といって古くなった血液が“溶けたチョコレート状”になって貯留し、周囲の組織と癒着を形成します。これらの子宮内膜症の病巣はエストロゲンに対して依存性であるので、エストロゲン作用が少ない初経前や閉経後ではほとんど認められず、発症のピークが30〜40歳代前半であるのを特徴としています。

◆子宮内膜症ってめずらしいの?

生殖年齢(月経周期を有する年齢)の5〜10%に認められると言われていますが、その実態は必ずしも明らかになったわけではありません。生殖年齢の人を対象にして、婦人科手術が行われた際に子宮内膜症があるかどうかを調べてみると、35.7%の頻度で子宮内膜症が発見されています(平成9年度厚生労働省研究班)。この数字は、何らかの婦人科疾患があって、手術を受けた人を対象としていることから、差し引いて考える必要はあるかもしれませんが、子宮内膜症が生殖年齢女性のポピュラーな疾患であることは確かでしょう。

◆どんな症状があるの?

毎月月経期になると子宮内膜症の病巣でも剥離・出血(つまり内出血)が起こり、プロスタグランディンやサイトカインなどの物質が産生され痛みが誘発されます。
子宮筋層内を含む子宮周囲に病巣があれば、月経困難症(生理痛)となり、子宮と直腸の間あたり(ダグラス窩と呼びます)に病巣があれば、排便痛や肛門への痛みとなり、子宮と膀胱の間あたり(膀胱子宮窩と呼びます)に病巣があれば尿意を催した時に痛みを感じ、深部(仙骨子宮靱帯)に病巣があれば性交時痛が出現し、腹膜に病巣が散らばっていれば、下腹部痛に嘔気などの腹膜刺激症状が加わることになります。最初は、月経時だけであった症状も、炎症を繰り返し癒着ができることなどから、次第に月経期以外の時にも認められるようになってしまいます。このように子宮内膜症は慢性的骨盤痛の主な原因であり、慢性的骨盤痛を訴える人の30〜90%に子宮内膜症が関わっているとされています。
子宮内膜症の症状に関する厚生労働省研究班の報告(平成9年度)では、
★月経困難症(生理痛):88%
そのうち70%の方は鎮痛剤を必要とし、鎮痛剤を使用しても日常生活の支障を来す重症例が18%認められています。
★月経時以外の下腹部痛・腰痛:46%
★性交時痛・排便痛:30%
★不妊症:82%
などとなっています。
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◆どうして不妊症になるの?

さまざまな要因が複雑に絡み合って不妊症が起こると考えられています。子宮内膜症のためにできた骨盤内癒着が卵管・卵巣周囲にあれば、卵管狭窄閉塞の原因となりますし、チョコレート嚢胞があれば物理的圧迫が障害となることも考えられます。ただし、このような癒着や嚢胞がない軽症の場合でも不妊症となるのも事実であり、その原因としては以下のようなものが考えられています。
排卵障害
子宮内膜症では、卵胞形成過程の異常により卵子の質の低下が起こり、妊娠しにくい状態となっている可能性があります。卵胞からの女性ホルモンの分泌も変調をきたし、周期内変動に乱れを生じていることもあります。黄体化未破裂卵胞(LUF)といって、基礎体温は2相性を示し黄体が形成されているのに、超音波で観察すると排卵していない状態も子宮内膜症では多く、卵排出障害が不妊の原因であることも推察されています。また、高プロラクチン血症の頻度も高く、プロラクチンによる卵巣機能の抑制も関与していると考えられています。

受精障害
子宮内膜症では卵子の質の低下の他に、精子の卵子への結合・侵入機構の障害も示唆されています。
腹腔内環境異常
子宮内膜症の方では腹水量が増加していて、炎症関連物質(プロスタグランディン・サイトカインなど)の濃度も高いことが知られています。これらの物質が卵子・精子・胚・卵管・子宮内膜に直接的・間接的影響を及ぼしている可能性があります。また、卵巣や子宮内膜に対する自己抗体が精子運動能を低下させているという報告もあります。

内膜機能異常
卵の質の低下だけでなく、子宮内膜自体の機能異常により着床が障害されることが不妊の原因となっていることも報告されています。

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◆どんな人がなりやすいの?

家族歴
1卵性双胎の姉妹では同時発生率が高いこと、家族内に集積性が認められることから、遺伝的背景があるものと考えられています。

月経歴
初経が早かった人はなりやすいとされています。また、月経周期が短く月経回数の多い人はなりやすいとされ、月経周期が27日以下で月経期間が7日以上の女性では、そうでない女性に比べリスクが2倍となると報告されています。

妊娠分娩歴
未婚または不妊の方に多いとされています。また、妊娠分娩回数が多いほど発症しにくいとされています。

経口避妊薬
経口避妊薬を服用している人ではなりにくいとの報告もありますが、結論には至っていません。

喫煙
以前は、喫煙女性に発症率が低いとの報告がありましたが、現在は否定的な報告の方が多いようです。

◆どうして起こるの?

どのようにして子宮内膜症が発症するかについては、まだ結論が出ていません。一番有力視されている説は、月経血が卵管を通って子宮から腹腔内に逆流し、子宮内膜細胞の腹腔内への移植が起こるとするもの(子宮内膜細胞経卵管移植説)ですが、腹膜(腹膜中皮)が発生学的には子宮・卵管の上皮と同一であり、腹膜が子宮内膜へと変化する潜在能力を有しているため、腹膜から子宮内膜症が発生してくるとするもの(化生説・誘導説)や、胎生組織の遺残細胞から子宮内膜症が発生してくるとするもの(胎生組織遺残説)やそれぞれが絡み合って発生するとするもの(複合説)などがあります。

◆まぎらわしい病気はないの?

子宮筋層内に子宮内膜組織が侵入(迷入)して発症する子宮腺筋症と症状などは似かよっています。子宮内膜症と子宮腺筋症は、以前は病巣の位置が異なるだけで基本的には同一の疾患と考えられてきましたが、最近では両者は疫学的にも成因的にも違う疾患ととらえられてきています。

◆悪性化しないの?

子宮内膜症と卵巣癌との関連については最近話題となってきています。チョコレート嚢胞が癌化する頻度は、0.7〜1%とされ、組織型では類内膜癌や明細胞性癌が多いことが知られています。
チョコレート嚢胞が発見された場合、腫瘍マーカーや超音波断層検査・MRIなどの画像診断で経過がみられることも多いのですが、増大傾向を示したり、悪性化を疑わせる乳頭状増殖・充実性部分が出現したり、腫瘍マーカーCA125の上昇を認めた場合はもちろんのこと、ある程度の大きさ(腫瘍径が5〜6cm以上)が持続する場合もやはり手術療法を受けた方がよいでしょう。
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◆どのように検査して診断するの?

子宮内膜症の診断には、腹腔鏡または開腹による視診と組織診で確定診断を下すことが推奨されていますが、現状では腹腔鏡検査による診断が16%、開腹手術によるものが20%にすぎず、残りは臨床症状・内診所見・血液検査(CA125など)・画像診断などにより“臨床的子宮内膜症”と判断されています(平成9年度厚生労働省研究班)。
内診所見による臨床分類にはBeecham分類が用いられています。
子宮内膜症のBeecham分類
 
第1期
散在性の1〜2mmの内膜症小斑点を骨盤内に認める。開腹時にはじめて診断される。

第2期
仙骨子宮靱帯・広靱帯・子宮頚部・卵巣が一緒に、あるいは別々に固着し、圧痛・硬結を生じ、軽度に腫大している。

第3期
第2期と同じだが、少なくとも卵巣が正常の2倍以上に腫大している。仙骨子宮靱帯・直腸・付属器は癒合して一塊となっている。ダグラス窩は消失している。

第4期
広範囲に及び、骨盤内臓器は内診でははっきりと区別できない。
(日本産科婦人科学会、1993)
子宮内膜症のBeecham分類
(武谷雄二監修:Clinical Color Guide:Hoechstより)
不妊を主訴としていて、特に腹痛などの症状のない患者さんに腹腔鏡検査を行ってみると、30〜60%の頻度で子宮内膜症が確認され、しかも、これら発見された患者さんの約30%は、すでにかなり病状が進行(3期・4期)していることが知られています。したがって、必ずしも症状と病状との間に相関があるというものでもなく、確定診断には腹腔鏡検査が必要といえます。ただし、検査といえども腹腔鏡検査には多少の侵襲とリスクを伴うわけですから、腹腔鏡検査をすすめられても抵抗を感じる人も多いと思われます。目的はあくまでも症状の改善・消失であることを考えると、腹腔鏡検査に抵抗を感じる人は、“臨床的子宮内膜症”の診断の下に薬物療法を受けてみて、まずは治療効果を期待してもよいのではないかと思われます。
ただし、不妊症で子宮内膜症の臨床所見がある人や薬物療法の効果が乏しかった人は、やはり一度は腹腔鏡検査は受けるべきでしょう。腹腔鏡には“検査”であるとともに“治療手段”というメリットもありますので、異常が発見された場合は、腹腔鏡下手技によりある程度の治療効果も期待することができるでしょう。


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CA125について
CA125は、本来は腫瘍マーカーの一種で、特に卵巣癌(漿液性癌・類内膜癌など)で高値を示し、癌の縮小とともに測定値が低下するため、卵巣癌の診断だけでなく治療効果の判定にも用いられています。
子宮内膜症は良性疾患ですが、このCA125が高値を示すことが多いため、診断や治療効果の判定の補助的手段としてその測定が行われています。ただし、子宮内膜症の人がみな高値を示すわけではありませんから、CA125が正常値だからといって子宮内膜症を否定することはできません。また、逆にCA125が高値だからといって子宮内膜症と確定診断されるわけでもありません。あくまでも“補助的検査”であることを理解しておいて下さい。

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ブルーベリースポットについて
古くなった血液が卵巣に貯まると、溶けたチョコレート様の内容液を満たしたチョコレート嚢胞となりますが、骨盤腔内に散在する子宮内膜症の病巣は漿膜下に出血を貯め黒ずんで見えます。この斑点は、見た目が果物のブルーベリーに似ていることから、ブルーベリースポットと呼ばれています。
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◆どのように治療するの?

    薬物療法

    鎮痛剤
    プロスタグランディンが痛みの原因物質の1つであることから、“痛み止め”の第1選択薬としてプロスタグランディン合成阻害剤が用いられます。
    具体的には、ポンタール、ボルタレン、ブルフェン、ナイキサン、ロキソニン、ソランタールなどがありますが、鎮痛作用と副作用を見ながら、その人その人に応じて一番合う製剤が選択されます。
    悪心・嘔吐・食欲不振などの副作用を予防するためには、牛乳で服用するとよいでしょう。ただし、消化性潰瘍アスピリン喘息の既往のある方では、症状の悪化や発作の誘発が考えられますので服用することはできません。
    また、月経困難症の10〜30%では、これらプロスタグランディン合成阻害剤が無効であり、この人達ではプロスタグランディンが痛みの主原因でないことが示唆されています。おそらくこのような人たちでは、ロイコトリエンなどが原因物質と考えられ、今後ロイコトリエン受容体拮抗剤が新しい治療薬となってくる可能性もあります。

    低用量ピル
    従来は、偽妊娠療法として高用量経口避妊薬が用いられていましたが、副作用を軽減した低用量ピルが使用可能となり、有効性が確認されています。ただし、子宮内膜症に対する低用量ピルの保険適用がないのが難点です。

    ダナゾール
    ダナゾールは合成アンドロゲン(男性ホルモン)で、卵巣における女性ホルモンの合成を抑制したり、脳下垂体におけるFSH・LH分泌を抑制することにより有効とされていますが、体重増加・液体貯留・にきび・多毛・肝障害・声の変化などの副作用に注意が必要です。

    GnRHアゴニスト
    FSH・LHの分泌を抑制し、無月経を誘導することによって効果を発揮します。
    副作用として更年期症状が出ることと、骨代謝への影響(骨粗鬆症)が考えられるため、治療期間は最長6ヶ月に制限されています。
    投与終了後の再来月経時の症状改善度は、
    下腹部痛 ・・・67%
    腰痛 ・・・60%
    排便痛 ・・・45%
    総合的改善度 ・・・67%
    で、月経時以外の疼痛も改善し、卵巣腫瘤も縮小するとされています(水口弘司他)。

    具体的には、鼻腔内噴霧薬と注射薬があります。

    鼻腔内噴霧薬
    スプレキュア(buserelin):1回左右の鼻腔内に各1噴霧、6ヶ月
    ナサニール(nafarelinacetate):1回片側の鼻腔内に1噴霧、6ヶ月
    注射薬
    ゾラデックス(goserelin):4週毎に皮下注射、6ヶ月
    リュープリン(leuprorelinacetate):4週毎に皮下注射、6ヶ月
    スプレキュアMP(buserelinacetate):4週毎に皮下注射、6ヶ月

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    GnRHアゴニストって何?
    GnRHは視床下部から分泌されるペプチドホルモンで、脳下垂体前葉からのFSHやLHの分泌を促しています(詳しくは成熟女性におけるホルモン動態を参照して下さい)。
    GnRHアゴニストはGnRHの生理活性を持った薬剤ですから、投与すると体内のGnRHと同じ作用を発揮します。『では、どうしてGnRHアゴニストの投与で卵巣機能が抑制されて無月経になり、子宮内膜症に効果があるの?』と疑問を持たれた方、あなたはまさに頭脳明晰な理論家だと思います。
    疑問を持たれるのは当然だと思いますので、ここで少し説明しておきたいと思います。
    GnRHは生体内において律動的分泌つまり間欠的に分泌されていて、受容体と呼ばれる“受け皿”に結合するとスイッチがオンとなり、FSHやLHの分泌を促進しています。
    ところがGnRHアゴニストの投与は律動的(間欠的)ではなく、絶え間ない連続分泌の状態を人為的に作り出しています。そうすると受容体レベルで“一種の麻痺” (これをdown regulationと呼びます)が起こり、正常な反応がブロックされてFSH・LHの分泌が抑制され、その結果、卵巣機能の低下・エストロゲンの低下・月経の停止が招来され子宮内膜症に効果が発現されるわけです。
    だたし、すぐにdown regulationが起こるのではなく、GnRHアゴニストの投与当初は一時的にFSH・LHの分泌が亢進(up regulationと呼びます)し、投与後3〜4日をピークにエストロゲンの分泌過多が起こります。このエストロゲンの一時的な分泌過多を“炎がメラメラと燃え上がるというイメージ”からflare upと呼んでいます。
    その後徐々にdown regulationが起こり、1ヶ月以内に低エストロゲン状態(通常、20pg/ml以下)となるわけです。おわかりいただけましたでしょうか!?


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    Add-back療法
    GnRHアゴニストによる治療法は、低エストロゲン状態を誘導することによって効果を発揮していますが、同時に更年期障害・骨塩量の減少・脂質代謝異常などが副作用として問題となってきます。
    そこで、内膜症の治療効果が期待でき、しかも副作用を軽減できるレベル(エストロゲン濃度:20〜50pg/ml)にエストロゲンを調節しようというのがこの方法です。
    通常、GnRHアゴニストの治療開始後12週目から、閉経後のホルモン補充療法に準じてエストロゲン(プレマリン)とプロゲストーゲン(ヒスロン・プロベラ)を投与しますが、薬剤への反応には個人差があり、まだ一定の方法が確立されたわけではありません。
    同じ目的では、エストロゲン製剤を用いる代わりにGnRHアゴニストの投与量を漸減したり、投与間隔を延ばしたりする方法も試みられ、一定の成果が得られてきています。

    手術療法

    腹腔鏡あるいは開腹術を用いた
    癒着剥離術
    チョコレート嚢腫切除術
    病巣蒸散術
    仙骨子宮靱帯切断術
    LUNA(laparoscopic uterosacral nerve ablation)
    などが行われています。
    疼痛対策に加え、不妊症対策として行われることも多いのが特徴です。疼痛など自覚症状の改善に有効であり、薬物療法の併用で再発率を下げることができます。
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◆手術するしないはどのように決めるの?

(1)両側の卵巣にチョコレート嚢胞がある場合
(2)骨盤内の子宮・卵巣・卵管・腸管などに強い癒着が考えられる場合
(3)薬物療法で症状の改善がみられない場合
(4)不妊症で精査が必要と考えられる場合
などが手術の対象と考えられます。
◆開腹手術か腹腔鏡下手術かはどのように決めるの?
腹腔鏡を用いた手技により、癒着を剥離したり、チョコレート嚢胞を切除したり、かなりの範囲の手術操作が可能なため、最近では腹腔鏡下手術が選択される機会が多くなってきています。ただし、腹腔鏡下で観察して予想以上に癒着がひどくて、その場で開腹術に切り替えざるを得ない場合もあることを了解しておくべきでしょう。
内診所見で子宮・付属器などの移動性がなく、強度の癒着(このような場合をfrozen pelvis:“凍りついた骨盤”と表現します)があると考えられる場合は、最初から開腹術の適応となります。

◆手術以外でなんとかなりませんか?

生理痛などの症状を改善したいのであれば、薬物療法でかなりのよくなることが望めるでしょう。また、チョコレート嚢胞については、腟式超音波下にアルコール固定を試みることも可能です。ただし、“手術するしないはどのように決めるの?”のところに記載した手術適応がある場合は、基本的には手術でしょう。
また、不妊症で妊娠・分娩を望まれている場合は、少なくとも1度は腹腔鏡下の観察と必要に応じて治療(腹腔鏡下手術)を受けた方がよいでしょう。


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チョコレート嚢胞のアルコール固定
腟式超音波下にチョコレート嚢胞に穿刺針を刺入し、内容液を吸引除去後洗浄し、高純度エタノールを注入して嚢胞内面を覆う内膜細胞をアルコール固定する方法です。
約15分の固定後、アルコールを吸引除去し、生理食塩水で洗浄して終了しますが、これにより内膜細胞は増殖能を失い、嚢胞も自然退縮します。ただ、ある程度のアルコールが血液中に吸収されるため、アルコール不耐性の方では、顔面紅潮等の“酩酊”状態が起こる恐れがあります。
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◆手術の創がおなかにできることに抵抗があるのですが?
さしあたって腹腔鏡下手術であれば、1〜1.5cm程度の小さな創が3カ所ほど付くだけで、時間の経過とともの目立たなくなると思います。手術で得られるメリット(症状の改善や妊娠)と美容上の創とを天秤にかけてご判断下さい。

◆再発するのですか?

子宮内膜症は残念ながら再発を繰り返しやすい病気です。
手術を行って可能な限りの病巣除去をはかり、薬物療法を併用したとしても、やはり病巣の完全除去には至ることができません。したがって、卵巣機能の回復に伴ってエストロゲンの分泌が再開されるようになると、再度増殖がみられ再発が起こることになります。
妊娠することや、正常のホルモン状態であることを優先して治療を中断すると、子宮内膜症は再発や悪化をきたす可能性があり、子宮内膜症の治療を優先すれば、更年期症状や骨粗鬆症が問題となったり、排卵が抑制されて妊娠できないという問題に直面することになります。したがって、それぞれの患者さんのニーズに沿って、治療方法と治療期間が決められています。

◆日常生活の注意点は?

特に何かをして子宮内膜症を防ぐということはできませんが、子宮内膜症があったからといって一生生理痛や腹痛に悩まされるといったこともありません。不妊症の原因となることはあっても、多くの人は妊娠・分娩を経験できますし、しかも分娩回数が重なるにつれて症状も自然軽快する場合が多く認められています。
どんな病気にも共通することですが、深刻になりすぎないように、適切な治療を受けるとともに、“痛み”とうまく付き合っていく態度が大切なのではないでしょうか。


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子宮内膜症とダイオキシン
近年、ダイオキシンのよる環境汚染が問題となってきていますが、サルにダイオキシンを慢性的に与えると子宮内膜症が発症することが知られています。ヒトにおいては、まだ確証が得られたわけではありませんが、ダイオキシン汚染の程度と子宮内膜症の発生は相関していることから、ダイオキシンは子宮内膜症の発症リスクを高めている可能性があると考えるのが妥当かもしれません。今後も地球環境は大切に守っていきたいものです。
内分泌覺乱物質については別項を参照して下さい。
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子宮腺筋症

◆どんな特徴があるの?

子宮内膜組織が子宮筋層内に侵入(迷入)した病気です。子宮内膜症が卵巣や腹膜など骨盤内に拡がっているものを指すのに対し、子宮腺筋症は“子宮筋層内に限局した子宮内膜症”と考えればわかりやすいでしょう。ただし、あくまでも臨床的に言えばであって、最近では子宮腺筋症は子宮内膜症とは疫学的にも成因的にも異なる疾患ととらえられてきています。

◆子宮腺筋症ってめずらしいの?

発生頻度は5〜20%と報告者によって幅がありますが、子宮内膜症ほど多くはないものの、かなりポピュラーな婦人疾患と言えるでしょう。

◆どんな症状があるの?

主な症状は生理痛(月経困難症)・過多月経・不妊などで、子宮筋腫の症状とも共通していますが、その程度が強いのが特徴です。性交痛や排便痛を伴う場合は、子宮内膜症の合併も考えられます。

◆どうして不妊症になるの?

不妊の原因については、着床障害が考えられていますが、子宮内膜症の場合とほぼ同様のメカニズムの関与も推察されます。不妊症の治療の面からは、子宮腺筋症は難治性疾患と考えざるをえません。

◆どんな人がなりやすいの?

30歳後半から閉経前までの女性で、分娩や妊娠中絶を経験した人に多い傾向が見られています。

◆どうして起こるの?

エストロゲンに暴露されている期間の長さが1つの要因であり、分娩を経験することや妊娠中絶のための手術操作などが引き金となって、子宮内膜細胞の子宮筋層内への侵入が起こる可能性が示唆されています。つまり、分娩による子宮筋の伸展と収縮や手術操作による機械的刺激がリスクファクターであり、エストロゲンが増殖促進因子となって発症する可能性があるわけです。

◆まぎらわしい病気はないの?

症状的には子宮内膜症子宮筋腫がまぎらわしい疾患であり、また、しばしば合併して存在しています(子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症の合併図を参考にして下さい)。

◆悪性化しないの?

子宮内膜癌の人には、20〜40%の頻度で子宮腺筋症の合併が認められています。子宮内膜癌も子宮腺筋症もエストロゲンに依存性のある疾患であり、関連性があるとする報告も見られますが、結論には至っていません。いずれにしろ、一般的に言えることですが、婦人科悪性腫瘍の早期発見のために、定期検診は欠かさず受けるようにすべきでしょう。
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◆どのように検査して診断するの?

超音波断層法やMRIなどの検査がなされます。
超音波では、子宮筋層の肥大(厚みの増大)を認め、子宮全体が楕円形を示します。瀰漫性あるいは結節性の塊が認められますが、正常筋層との境界が不鮮明・不規則なのが子宮筋腫との違いです。このような病変は子宮後壁にみられることが多いのですが、時には腫瘤像の中に子宮内膜組織や出血巣が点状に光って(高輝度)見えることもあります。MRI(T2強調画像)でも増殖した子宮内膜組織や出血巣が不均一な腫瘍内部に点状の高信号として認められ、この信号の数と症状(生理痛)には相関があるとされています。
また、しばしば子宮内膜症の合併が認められることから、腹腔鏡を用いて直接腹膜病変の有無を検討することもあります。

◆どのように治療するの?


薬物療法
基本的には子宮内膜症の治療と同様のため、子宮内膜症の薬物療法の項を参照して下さい。
手術療法
妊娠・分娩を希望しないのであれば、症状に応じて子宮摘出術(腹式単純子宮全摘術・腟式単純子宮全摘術)が考慮されます。妊娠・分娩を希望する場合は、瀰漫性の子宮腺筋症は手術の対象となりませんが、腫瘤形成型子宮腺筋腫と呼ぶ場合もあります)の場合は核出術が行われることもあります。ただし、子宮筋腫とは異なり正常筋層との境界が不明瞭なため、手術操作が容易でないことがあります。

◆再発するのですか?

子宮を摘出することなく薬物療法を行った場合は、卵巣機能が回復し、エストロゲン分泌が一定レベル以上に保たれるようになると再発の可能性はあります。

◆日常生活の注意点は?

特に何かをして子宮腺筋症を防ぐということは残念ながらできません。
子宮腺筋症の治療に際しては、子宮を摘出すべきかどうかが往々にして問題となります。何歳か、既婚か未婚か、不妊症で妊娠・分娩を望んでいるか、生理痛・過多月経などの症状がどれくらい重症か、などが治療方針を決定する際に判断材料となります。ただし、あくまでも患者さんご自身のご意向が優先されるのは当然であって、ご自分が“何を望んでいるのか”を明確に医療サイドに呈示すべきでしょう。将来の家族計画もふまえ、ご主人とも十分に相談をされ、結論を出して下さい。