山本産婦人科(三重県津市)の腹痛・子宮外妊娠・附属器炎・卵巣腫瘍茎捻転・虫垂炎・膀胱炎・尿路結石についてのページです。

腹痛

腹痛をきたした場合、産婦人科に行くべきか、内科に行くべきかと悩む人もみえると思います。女性内生殖器は骨盤内にありますから、おへその両脇にある骨盤の出っ張り(医学用語では、上前腸骨棘といいます)を結ぶ線より下に痛みがあれば産婦人科を受診し、この線のあたりや線より上の痛みであれば、まず内科を先に受診してはいかがでしょうか。内科医が産婦人科受診の必要性を認めた場合は、あらためて紹介状を書いてくれると思います。

生理と関係なく下腹部が痛い

生理痛については『生理痛がひどい』、生理前に決まって痛みが起こる場合は『生理前になると体調がよくない』の項を参照して下さい。
生理と関係なく下腹部が痛い場合は、何らかの異常の可能性がありますから、産婦人科を受診して下さい。
女性において下腹部痛をきたす主な原因疾患を下表にまとめました。
女性における下腹部痛の主な原因
    1. 妊娠と関係のあるもの
      • 流産
      • 子宮外妊娠
    2. 感染症によるもの
      • 子宮傍組織炎
      • 子宮内膜炎
      • 付属器炎(卵管炎)・付属器膿瘍
      • 骨盤腹膜炎
    3. 腫瘍など
      • 卵巣腫瘍の茎捻転
      • 出血性卵巣嚢胞
      • 卵巣過剰刺激症候群
      • 子宮内膜症
      • 子宮腺筋症
      • 子宮筋腫(茎捻転・二次変性・感染)
    4. 婦人科以外の疾患
      • 虫垂炎
      • 膀胱炎
      • 憩室炎
      • 尿路結石
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1.妊娠と関係のあるもの

もともと生理不順があったり、胎盤徴候を生理と勘違いしたりして、意外と本人も妊娠に気づいていないことがあります。お乳が張って痛かったり(乳房緊満)、トイレが近くなったり(頻尿)、ムカムカしたり(嘔気)する妊娠徴候も参考になりますが、まずは、薬局で妊娠検査薬を買い求めて、検査してみるとよいでしょう。
妊娠反応が陽性で腹痛があれば、流産や子宮外妊娠の可能性もあり注意が必要です。赤ちゃんがほしい・ほしくないは別として産婦人科を速やかに受診して下さい。
流産の場合は、腹痛に出血を伴っていなければ、切迫流産の状態である可能性が高いとは思われますが、そのうち進行流産に移行する可能性もあります。
子宮外妊娠はもっとやっかいで、緊急手術が必要となることがあります。正常妊娠と異なり子宮の外に着床した異常妊娠で、着床部位により卵管妊娠・卵巣妊娠・腹腔妊娠・間質部妊娠などに分類されますが、いずれにしろ、大量出血(腹腔内出血)を来す可能性がありますから、できるだけ速やかに治療を開始することが望まれます。特に、将来赤ちゃんをご希望の場合には、できれば卵管等の機能を温存する保存治療が望ましいので、保存治療が可能な早い時期に受診することが大切でしょう。


卵管の構造と子宮外妊娠(M.M.Garrey et al.)

断面図でわかるように卵管内腔は非常に複雑な構造をしています。受精卵は受精後約6日をかけてこの中を運ばれて子宮に達するわけですが、炎症・癒着があれば卵管内に留まって、卵管妊娠となってしまうのが理解できると思います。下左は子宮外妊娠の中で一番頻度が高い卵管膨大部妊娠、下右は間質部妊娠を示しています。
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2.感染症によるもの

子宮傍組織炎・子宮内膜炎・付属器炎・付属器膿瘍・骨盤腹膜炎はいずれも病巣部位の違いであって、互いに関連のある病気と理解して下さい。
病原菌が腟から子宮頚管を経由して拡がることを上行性感染と呼びますが、病変が子宮頚部周辺に及べば子宮傍組織炎、内膜に及べば子宮内膜炎、付属器に及べば付属器炎、付属器に膿瘍を形成すれば付属器膿瘍、腹膜に達すれば骨盤腹膜炎となります。
子宮傍組織炎では子宮腟部周囲に圧痛、子宮内膜炎では子宮に圧痛、付属器炎では卵管・卵巣部位に圧痛、付属器膿瘍であれば付属器に圧痛のある腫瘤形成がそれぞれ認められます。骨盤腹膜炎になると、症状はさらに強く、高熱を来すことも稀ではありません。
嫌気性菌を含む一般細菌・マイコプラズマ・クラミジア淋菌などが病原菌となりますが、若年者を中心に蔓延しているクラミジアによることが最も多く、最近の性習慣の変化が原因となっているものと考えられます。いずれにしろ、適切な治療を受けないと感染が拡がることにより、入院加療を要する状態となったり、卵管が詰まって不妊症の原因となったり、卵管が詰まらないまでも通過障害を来すことによって子宮外妊娠の原因となったりする可能性が考えられます。放置せずに産婦人科を受診して適切な治療を受けましょう。


コーヒーカップ
子宮傍組織炎・付属器炎って何?
子宮の傍らって何?付属器って何に付属するの?と疑問に思った人も多いと思いますので、ここで少し説明しておきます。
子宮傍組織とは、子宮を中心に骨盤内臓器周囲を占める結合組織のことを言います。子宮傍組織炎は別名骨盤結合織炎とも呼ばれ、炎症が子宮をとりまく結合組織に及んだ状態を指します。次に、付属器ですが、子宮を中心にしてその周囲の臓器を子宮付属器と呼びます。
極めてアバウトな呼び名であって必ずしも的確ではありませんが、付属器炎と言えば、子宮周囲にある卵管・卵管間膜・靱帯・卵巣などの炎症を意味します。もっと的確に卵管炎とか卵巣炎とか言えばいいのですが、それぞれの臓器が互いに近接した位置関係にあり、内診や検査で炎症の境界を明確にできないため、“ダンゴ”状態ではありますが、付属器炎と呼ぶわけです。
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3.腫瘍など

    卵巣腫瘍の茎捻転

    卵巣腫瘍の茎捻転は、ある程度大きくなった卵巣腫瘍 (通常、直径5cm以上)が卵巣門と呼ばれる卵巣への血管・リンパ管・神経が出入する部分でねじれた状態で、良性腫瘍でも悪性腫瘍でも起こります。ねじれることにより血行が悪くなったり、途絶したりするわけですから、早く処置を受けないと卵巣は壊死状態に陥ってしまいます。早い時期に手術を受ければ、血流の再開により卵巣を残すことが可能ですが、遅れると切除しなければならなくなります。

    (M.M.Garrey et al.)

    卵巣腫瘍の詳細

    出血性卵巣嚢胞

    これは機能的なもので、いわゆる腫瘍ではありません。卵巣出血の一種で、排卵後に卵胞内に出血したり、黄体内に出血したりして、時に腹痛を起こします。通常、経過観察だけで済み、腫瘤も自然に縮小します。

    卵巣過剰刺激症候群

    排卵誘発剤の使用により起こる病態であり、不妊症治療を受けていない一般の人に起こる可能性はありません。最近では排卵誘発剤の改良により、FSH製剤中のLH成分の比率が低下し、卵巣過剰刺激症候群を発症する頻度は低くなりつつありますが、 多嚢胞性卵巣症候群 での排卵誘発などの場合では、依然として発症する可能性があります。腹痛は腹水を伴い、重症化すると胸水の貯留を認めるようになり、入院して適切な治療を行う必要があります。
    詳細はこちら

    子宮内膜症

    子宮内膜症は、子宮の内腔以外の場所に子宮内膜やそれによく似た組織が発育し、悪性ではないのに増殖や浸潤を起こし、周囲の組織と強い癒着を作る病気です。
    子宮内膜は女性ホルモンの作用により周期的に変化し、月経という消退性出血をきたしていますが、内膜症の病巣でもエストロゲンの作用を受けて同じような周期的変化、つまり増殖剥離出血が繰り返されていて、徐々に病状が進行するものと考えられています。最初は月経時だけであった症状も、炎症を繰り返し癒着ができることなどから、次第に月経期以外の時にも認められるようになってしまいます。このように子宮内膜症は慢性的骨盤痛の主な原因であり、慢性的骨盤痛を訴える人の30〜90%に子宮内膜症が関わっているとされています。
    子宮内膜症の詳細

    子宮腺筋症

    子宮内膜組織が子宮筋層内に侵入(迷入)した病気で、女性ホルモンの作用により子宮筋層内の病巣が周期的に変化し、増殖剥離出血を繰り返すことにより痛みが出現します。
    子宮腺筋症の詳細

    子宮筋腫(茎捻転・二次変性・感染)

    有茎性漿膜下筋腫といって子宮筋腫が茎をもった状態で、ブラブラと移動可能であると、茎捻転を起こして腹痛を来すことがあります。また、大きくなった子宮筋腫の内部が血行不良に陥り2次変性したり、2次感染を起こしても腹痛を来します。
    子宮筋腫に関する詳細
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4.婦人科以外の疾患

    虫垂炎

    俗に言う“盲腸”です。以下のような典型的な虫垂炎の症状を理解しておくとよいでしょう。
    A) 腹痛はみぞおち(心窩部)あたりから始まり、24時間以内に右下腹部に移動します。
     (最初から虫垂のある右下腹部が痛むわけではありません
    B) 食欲が落ちます。時には吐き気もあります(空腹感があるようなら、虫垂炎の可能性は低いとさえ言えます)。
    C) 便通の習慣に変化がみられ、多くは便秘に傾きます。
    D) 押さえて一番痛い部分はおへそと腰の骨の出っ張りとを結んだ線の外3分の1の点から1cm下の部分(マックバーネイ点)にあります。さらに、この点を押さえた時と離した時の痛みを比較して、離した時の方が強ければ腹膜刺激症状が出ていることになり、より虫垂炎の可能性が濃厚になります。
    虫垂炎の痛みの部位
    E) さらに腹膜刺激症状が強くなると筋性防御と言って腹直筋が硬くなります。
    このような症状があれば、速やかに外科を受診して下さい。虫垂炎は緊急手術の対象です。

    膀胱炎

    排尿のたびに下腹部が痛むようなら膀胱炎が疑われます。膀胱炎の3つの主な症状(3主徴)は、“頻尿”・“排尿痛”・“血尿”です。つまり“トイレに行ったばかりなのに、またすぐ行きたくなる。まだ残っているような気がする(残尿感)”、“排尿の時、特に最後のあたりで痛む”、“ピンク〜ワイン色の尿が出る”のが膀胱炎の主症状です。女性は男性に比べて尿道が短いため、逆行性感染による膀胱炎が起こりやすく、1番多い起炎菌(原因となる菌)は大腸菌とされています。大腸菌は便の中で繁殖する菌ですから、局所の清潔に気をつけることが膀胱炎の予防策と考えてよいでしょう。膀胱炎は数日間の抗生物質の服用で治りますが、“水分をたくさん摂ってトイレに行く回数を増やし、自分の尿で膀胱を洗い流す”つもりでいると、より治りやすいでしょう。
    1度膀胱炎になった人は、その後も再発を繰り返しやすい傾向にあります。過労などの身体の抵抗力低下があったり、トイレを我慢したりすることが再発の引き金となりやすいので気をつけましょう。また、“膀胱炎かな?”と思ったら早めの診断と治療を受けましょう。放置すると感染が尿管を経て腎臓付近にまで及び腎盂腎炎となってしまうことがあります。腎盂腎炎は、40℃近い高熱をきたし、背部の叩打痛(腎臓のあたりを叩くと痛む)を認めるのが特徴ですが、こうなると入院加療を要することとなります。できるだけ膀胱炎の段階で感染をくい止め、腎盂腎炎にならないように注意しましょう。


    コーヒーカップ
    ハネムーン膀胱炎
    ハネムーンから帰ってきた女性が膀胱炎様症状を訴えることがあり、“ハネムーン膀胱炎”と呼ばれています。これは性行為の開始により、今まで経験のなかった機械的刺激が尿道・膀胱壁に加わることにより“頻尿”が誘発された状態であって、感染による膀胱炎ではありません。自然と軽快しますから、排尿痛や血尿がない限り様子をみてもよいでしょう。もっとも、性習慣の変化に伴い“ハネムーン膀胱炎”という言葉は死語に近く、正しくは“初交膀胱炎”とすべきなのかもしれませんが--------。
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    憩室炎

    憩室は腸管の粘膜層と粘膜筋層が外部にポケット状に突出したもので、数個の憩室がみられる場合を憩室症と呼びます。憩室症があるからといって、何らかの症状があるのではなく、炎症が加わり憩室炎を起こして初めて軽度の消化障害から激しい腹痛まで、さまざまな程度の症状が出現することになります。憩室炎はS状結腸といって直腸につながる大腸の部分にできることが多いため、左下腹部痛をきたし、俗に“左側位虫垂炎”と呼ばれています。つまり、“症状は虫垂炎とよく似ているが、虫垂の位置(右下腹部)ではなく、反対の左側に出現する”というわけです。
    疑わしい症状があれば内科を受診して検査を受けて下さい。

    尿路結石

    腎盂から尿道までの間に結石が認められるものを尿路結石といいます。結石の存在する場所により症状が異なり、腎盂にある時は無症状であったものが、尿管に流入すると激痛の原因となります。尿管の上部か下部かによっても痛みの部位が異なり、上部であれば背部痛、下部であれば下腹部痛となります。膀胱内に流入したとたん嘘のように痛みが消失しますが、それまでの間は婦人科疾患や消化器疾患の痛みとまぎらわしいことがあります。痛みの性格は疝痛といって尿管の蠕動運動に一致してさざ波のように間欠的に繰り返し起こります。通常、尿を顕微鏡で調べると血尿があることが尿路結石(尿管結石)の診断の糸口となります。尿管造影などにより確定診断がなされますから、泌尿器科を受診して下さい。

セックスの途中や後で下腹部が痛い

挿入時に腟の奥の方を突かれると痛い場合や、セックスの後に下腹部痛がある場合は、子宮頚部周囲や子宮と直腸との間(ダグラス窩といいます)に病変があり、性行為によりこの病変部位が刺激を受けて痛みが生じていると考えられます。原因疾患として1番頻度の多いものは、子宮内膜症ですが、子宮腺筋症(直腸腟腺筋腫と分類する人もいます)や子宮周囲の炎症(クラミジア感染症淋病を含む)も考えられます。一度産婦人科で検査を受けた方がよいでしょう。 便をした時にお尻の奥の方や腟の奥の方に痛みを感じる場合は、性交時痛と同様にダグラス窩に病変が存在すると考えられ、排便時に便塊が病変部付近を通過する際に生じる刺激が痛みを誘発しているものと推察されます。やはり、子宮内膜症が第1の原因と考えられますが、子宮腺筋症(直腸腟腺筋腫)や子宮周囲の炎症(クラミジア感染症淋病を含む)も考慮する必要があります。もちろん、痔疾などの直腸・肛門疾患も除外する必要があることは言うまでもありません。
一度産婦人科を受診して下さい。