山本産婦人科(三重県津市)の骨粗鬆症についてのページです。

”寝たきり老人”にならないために

骨粗鬆症について

骨粗鬆症って何ですか?

まず骨粗鬆症:“コツソショウショウ”と読みます。骨粗鬆症は、「骨密度の低下と骨の微細構造の劣化が特徴的で、その結果、骨の脆弱性が増大し、骨折を引き起こしやすい全身性の骨疾患」と定義されています。簡単に言えば、骨からカルシウムが抜け出して“骨がスカスカとなった状態”で、ちょうど大根に“ス”が入ったようなものと考えて下さい。

なぜ骨粗鬆症に注意すべきなのですか?

“寝たきり老人”の4人に1人は骨折が原因といわれています。この骨折が骨粗鬆症を基盤として起こるから、骨粗鬆症にならないように日頃の注意が必要なわけです。
“寝たきり”の原因となる大腿骨頚部骨折は、膝をついて倒れたり、おしりを打ったり、太ももをねじった際に起こります。その他、骨粗鬆症を基盤にして起こる骨折には、重いものを持ち上げたり、急に振り向くなどのわずかな外力が腰や背中に加わることによって起こる腰椎・胸椎の椎体圧迫骨折、手のひらをついて倒れた時に起こる橈骨遠位端骨折、肘をついて倒れた時に起こる上腕骨外科頚骨折などがあります。

腰の曲がった老人が野良仕事をしている姿は、何となくノスタルジックな日本の田園風景のようにも思われますが、医学的には椎体の圧迫骨折であり、できれば避けたい状態であるといえます。欧米を旅行していて腰の曲がった老人を見かける機会が極めて少ないのは、一体なぜでしょうか?1つは人種差であり、欧米人にはもともとがっちりとした骨粗鬆症になりにくい体型の人が多いためとも思われますが、日本に比べ古くからホルモン補充療法が浸透していたことも大いに関係しているのでしょう。
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骨粗鬆症って多いのですか?

多いです。骨粗鬆症は総人口の3〜4%に存在するといわれています。したがって、400〜500万人の人が潜在的に骨粗鬆症である計算になります。

どんな人がなりやすいのですか?

まず、男性に比べて女性がなりやすい病気です。女性は30〜40歳で得られる最大骨密度がもともと男性に比べて低値であり、加齢に伴う年1%程度の生理的な骨密度の低下に加えて、閉経直後ではエストロゲンの骨保護作用が消失するため、3〜5%以上にもなる急激な骨密度低下が起こり、骨粗鬆症になりやすいとされています。
では、女性の中でどのような人が特に骨粗鬆症になりやすいのでしょうか。次の表のような人がリスクが高いと考えられています。

骨粗鬆症の危険因子

1)やせ型で小柄できゃしゃな人。
2)偏食のある人。特に牛乳が嫌いでカルシウム不足のある人。
3)ビタミンDの摂取不足で日光に当たる機会が極端に少ない人。
4)過激なダイエットで減量している人。
5)運動が嫌いな人。
6)閉経が早かった人(早発閉経)や閉経前に両側卵巣の切除を受けた人。
7)胃腸が弱く、よく下痢をする人や胃切除を受けた人。
8)ステロイド剤を長期間服用している人。
9)神経因性食思不振症・甲状腺機能亢進症などの病気のある人。

*閉経後で骨量の減少を認める人では、70歳を超えるとほぼ全員が骨粗鬆症になるといわれています。
*50歳の日本人女性が、その生涯で脊椎圧迫骨折を起こす確率は37%とされています(稲葉ら、2004)。
*椎骨に既に骨折が認められる人では、骨密度が同等であっても骨折が認められていない人に比べて、新たに骨折を起こす可能性は4〜12倍と高くなる(Ross et al.1991)とされています。

日常の注意点は何でしょうか?

日常生活では以下の点に注意すべきでしょう。
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*運動

有酸素運動を行い、腹筋・背筋の筋力増強を図ることが大切です。

*食事

A)十分なカルシウムを摂りましょう
カルシウムの1日必要量は600mgとされていますが、米国NIHの指針では、はるかに高い1日1000〜1500mgを摂取すべきとしている点に留意すべきでしょう。
また、塩分を摂りすぎると尿中へのカルシウム排泄量が増加してしまうため、塩分の摂りすぎにも注意が必要です。

カルシウムたっぷりの食事
まずは、牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品を摂りましょう。骨ごと食べられる小魚もよいでしょう。ひじき・わかめなどの海藻や豆腐・がんもどき・油揚げ・厚揚げなどの大豆製品、切り干し大根・高野豆腐のような乾物もカルシウム源です。野菜では、小松菜・春菊・チンゲンサイ・しその葉・パセリに多く含まれ、ことに小松菜は豊富(100g中にカルシウム210mg含有)とされています。

B)十分なビタミンDを摂りましょう
ビタミンDには、血液中のカルシウム濃度を一定に保ち、カルシウムの腸からの吸収や骨への沈着などに重要な役割を担っています。

ビタミンDたっぷりの食事
米国では、高齢者に若年者の2〜3倍量のビタミンD(400〜600IU)を摂ることを勧めています。ビタミンDは、魚類(サケ・サバ・イワシ・まぐろ赤身)・鴨肉・卵・干し椎茸などに多く含まれていますが、サプリメントとして服用してもよいでしょう。

C)カリウム・マグネシウムも忘れずに
カリウム・マグネシウムも骨密度の減少に対し抑制効果があると報告されています。カリウムは里芋・ひじき・小松菜・ゆりね・バナナなどに、マグネシウムはひじき・ほうれん草・納豆・豆腐などに多く含まれています。
D)ビタミンKも忘れずに
ビタミンKは、オステオカルシンという骨に含まれている蛋白質を活性化し、カルシウムの尿中への排泄を抑えたり、骨の吸収を抑えるなど、骨代謝に影響を及ぼしています。ビタミンKの摂取量の少ない人に骨折率が高いことが報告されていますから、日頃から納豆・ほうれん草・春菊・ブロッコリーなどのビタミンKの豊富な食品を摂るように心がけましょう。
E)カロリー摂取を適切にしましょう
適切な食生活・適切なカロリー摂取により体重管理を図り、痩せすぎないことも大切です。

*嗜好

アルコール・カフェインについては、大量摂取した人に骨量の低下や骨折の増加が報告されていますから、過剰摂取は避けたほうがよいでしょう。
喫煙には、抗エストロゲン作用・カルシウム吸収抑制と尿中排泄促進などが報告され、喫煙者に脊椎の圧迫骨折の頻度が高いことが知られていますから、できれば禁煙したほうがよいでしょう。

*転倒防止

歩行能力を維持するため、バランス能力と下肢の筋力維持が重要で、白内障などの視力障害がある場合は積極的に治療を受けましょう。また、住環境のバリアフリー化も大切でしょう。
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どのように検査するのですか?

骨粗鬆症の診断装置には多くの種類があり、骨密度を絶対値として比較することができません。そこで、それぞれの装置の若年成人平均値(YAM:young adult mean)を基準に相対的に判断されています。腰椎のX線測定が最良とされていますが、大腿骨頚部・橈骨・第2中手骨・踵骨などでも測定されます。本院では、放射線の被曝がなく妊婦さんにも測定できる超音波骨量測定法超音波骨量測定法を採用しています。
骨代謝マーカー検査では、骨形成マーカーとして骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)が、骨吸収マーカーとして尿中T型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(NTX)が骨粗鬆症の治療薬選択と治療効果の判定に限るという条件付きで保険承認されています。
妊娠中の骨量測定について
本院では妊婦さんにも骨量測定を行っていますが、若い妊婦さんにも骨量の減少している人が結構見つかります。妊娠中は赤ちゃんの骨格発育にたくさんのカルシウムが必要となるため、とかく母体は犠牲になりがちで、食生活に注意しないと“虫歯”になったり“骨量が低下”したりしてしまいます。さらに、産後の授乳は母体のカルシウム不足に拍車をかけることになりかねません。こうして女性にはもともと生理的にカルシウム不足に陥りやすい基盤があり、閉経を迎えてエストロゲンが低下すると、急激に骨量が減少してしまうわけです。

どのような治療があるのですか?

骨量が低下してしまった後で治療を開始するのは非効率的であり、骨量減少の段階で予防策を講じることがあくまでも大切です。つまり、骨梁という骨組織の骨組みの連続性が一旦失われてしまうと、治療しても回復することは望めず、骨折の危険性が避けられないからです。実際、大規模臨床試験によって、椎骨椎体骨折の約50%、大腿骨頚部骨折の
約25%が早期治療により予防できることが明らかになっています(Black et al.1996,
Ettinger et al.1999)。
骨粗鬆症の治療薬として日本で許可されているものには、1)カルシウム製剤、2)活性型ビタミンD3製剤、3)ビタミンK2製剤、4)エストロゲン製剤、5)イプリフラボン製剤、6)カルシトニン製剤、7)蛋白同化ステロイド製剤、8)ビスフォスフォネート製剤、9)選択的エストロゲン受容体モジュレーター製剤の9種類があります。主なものを以下に紹介します。
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更年期障害などがあってホルモン補充療法が望ましい場合
更年期障害などエストロゲンの欠落による症状がある場合は、ホルモン補充療法がまず選択されます。

*プレマリン1錠(0.625mg)+プロベラ1錠(2.5mg)
1日1回・朝食後

ただし、乳癌や子宮内膜癌のようなエストロゲン依存性の悪性腫瘍・血栓症・重症肝機能異常・心不全・脳血管障害・腎疾患・ポルフィリン血症などがある場合は、エストロゲン製剤を使用することはできません。また、高血圧・糖尿病・脂質代謝異常・胆嚢疾患・喫煙者などでも服薬には注意が必要とされています。ホルモン補充療法に関する詳細は別項を参照して下さい。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター製剤

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:Selective estrogen receptor modulator)は、組織によってはエストロゲン類似作用を発現したり、逆に拮抗作用を発現したりする薬剤で、エビスタ(ラロキシフェン)が保健適応となっています。

*エビスタ1錠(60mg)1日1回・食事や時間に関係なく服用

ただし、本製剤はエストロゲン製剤より副作用が少ないものの、血栓形成が起こりやすい(1)血栓性静脈炎(塞栓症)の既往のある人、(2)運動制限(寝たきり)の人、(3)抗リン脂質抗体症候群の人では服用できません。本製剤を服用しても子宮内膜癌(子宮体癌)の発生率は上がらず、乳癌の発生率はむしろ低下するとされています。また、脳血管障害や冠動脈疾患の発生頻度も低下することが知られていますが、これはラロキシフェンの血清脂質低下作用と抗炎症作用によるものと考えられています。

ビスフォスフォネート製剤

破骨細胞の骨吸収能を抑制する働きのある薬剤です。

*フォサマック1錠(5mg)あるいはベネット1錠(2.5mg)を
1日1錠・毎朝起床時に水約180mlとともに服用

服用後、少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食や他の薬剤の服用も避ける必要があります。これは、この薬の食道粘膜への副作用(ビラン・潰瘍)を防ぐとともに、吸収を抑制しないためです。したがって、寝たきりの人や上部消化管に潰瘍性病変のある人には使用できません。この薬は、ホルモン補充療法が無効となった人にホルモン補充療法と併用することで一層効果が得られるとされています。
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イプリフラボン製剤

直接的な骨吸収抑制作用およびエストロゲンのカルシトニン分泌促進作用を増強することによる骨吸収抑制作用を持っています。

*オステン1錠(200mg)を1日3回毎食後に服用

消化性潰瘍や胃腸出血の副作用が稀に認められるため、もともと潰瘍性病変のある人にはおすすめできません。

ADFR療法

初めの2週間は活性型ビタミンD3(アルファロール)を内服(1日1回1カプセル)します。次にカルシトニン(エルシトニン)を週1〜2回の間隔で2週間筋注(1回10単位)します。その後、ビタミンD3の少量を4週間服用します。この8週間を1クールとして、同じスケジュールを繰り返す治療法です。

ADFR療法のスケジュール

A:Activate(活性化)D:Depress(抑制)F:Free(解除)R:Repeat(反復)