山本産婦人科(三重県津市)の機能性不妊・生殖補助医療(ART)・不育症・習慣性流産ついてのページです。

不妊症の原因と治療の進め方

第5段階

機能性不妊

さまざまな不妊症の検査を行っても、その原因を特定できないものを機能性不妊あるいは原因不明不妊と呼びます。当然、全く原因がないということはあり得ないわけであって、“原因を発見することが現在の診断技術では困難な不妊症”であると理解して下さい。不妊症の中で機能性不妊の占める割合は10〜20%と報告され、決して少なくはないのが現状で、従来の検査法に加えて、さらに詳細な内分泌学的検査・免疫学的検査・精子受精能検査・内視鏡的検索などから原因を追究しようという努力がなされます。また、既に行われた不妊症のスクリーニング検査や基本検査の結果を見直し、再評価をするとともに、必要に応じて再検査を行うことも大切となります。

機能性不妊の原因ではないかと推定される病態

    1. 黄体化未破裂卵胞(LUF)
    2. 潜在性高プロラクチン血症
    3. 黄体機能不全
    4. 軽症子宮内膜症
    5. 軽度卵管癒着
    6. 精子・頚管粘液適合不全
    7. 抗精子抗体や抗卵子抗体の存在
    8. 生殖器感染症
    9. 精子機能不全
    10. 性交障害
(産婦人科研修の必修知識2004,日本産科婦人科学会)

上表のように病状が典型的でなかったり軽症であるがゆえに、かえって見落とされている不妊原因がないかどうかをもう一度入念に検討する必要があります。

    黄体化未破裂卵胞(LUF)・黄体機能不全の存在

    基礎体温が高温になっても黄体化未破裂卵胞黄体機能不全がある可能性があります。基礎体温が高温相になったら超音波検査で卵胞消失による排卵を確認するとともに、高温相中期で黄体機能のチェックを行う必要があります。これらの検査成績は、当然検査された際の月経周期の結果であり、次周期の状況を保証するものではありません。したがって、毎周期のチェックが必要であることを理解して下さい。
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    潜在性高プロラクチン血症の存在

    プロラクチンというホルモンは日内変動(夜間に高値)が激しく、1回の測定では高プロラクチン血症を見逃している可能性があるため、プロラクチン放出因子であるTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)を用いた負荷テストを行い、潜在性の高プロラクチン血症がないかどうかを検討します。

    TRH(Thyrotropin releasing hormone)の構造

    THR負荷テスト

    プロラクチン測定(前値)
    TRH500μg・静注(または筋注)
    15,30、60、120分後にプロラクチン測定
    判定:15または30分後のプロラクチン値が70〜75ng/ml以上を示す時は
      潜在性高プロラクチン血症と診断され、高プロラクチン血症と同様の
      治療
    が行われることになります。

    子宮内膜症・卵管癒着の存在

    子宮卵管造影法で異常がなくても、直視下でお腹の中を観察できる腹腔鏡検査では、微細な異常が発見されることがあります。また、子宮鏡での子宮内腔の観察も有益な検査となることがあります。したがって、必要に応じて検査(再検査)が行われます。

    精子・頚管粘液適合不全の存在

    性交後試験(フーナー検査)は既に行われているわけですが、再検査で異常があれば配偶者間人工授精(AIH)が行われます。また、性交後試験に異常がなくても、機能性不妊の段階となれば、AIHを試みる価値はあると思われます。
    つまり、AIHを行うにあたり、1)精液中の精漿から精子を分離する過程で未知の不妊因子を除去できる可能性があり、2)運動性良好精子を濃縮し子宮内に注入することにより、少なくとも卵子に到達できる精子数を増加させ、効率を上げることができると考えられるからです(AHIの有効性を参照)。

    生殖器感染症の存在

    クラミジア淋病などの性行為感染症は不妊の原因となるため再検査し、必要に応じてカップル2人を対象に同時に治療を行います。また、腟炎などの非特異的な炎症があれば、頚管粘液の性状に障害をもたらす可能性があるため、積極的に治療する必要があります。

    抗精子抗体や抗卵子抗体の存在

    抗精子抗体の検出率は不妊症全体で男性:5〜10%、女性:7〜15%であり、機能性不妊に限るとこの頻度は3〜5倍に増加するといわれています。
    抗透明帯抗体(抗卵子抗体)については、ブタ卵などを用いた実験では受精障害の原因となることが知られていますが、臨床的な意義についてはまだ明確にはなっていません。
    いずれにしろ、免疫因子が原因と考えられる場合は、体外受精・胚移植などの生殖補助医療(ART)の対象と考えていただいた方がよいと思われます。

    精子機能不全の存在

    精液の状態は常に一定であることはなく、夫の体調を含めいろんな要素が影響を及ぼしていますから、定期的に精液所見について再検討を加えることも必要です。また、この際、せっかくの精液採取の機会を無駄にしないためにも、検査だけでなく同時にAIHの施行が望ましいでしょう。
    また、染色体検査が未施行の場合は、1度は検討する必要があります。
    当然、精子数が減少するほど染色体異常の頻度は増加し、無精子症で10〜15%、乏精子症で4〜5%とされていますが、精子数が正常の場合でも1%に染色体異常が存在する(松田他、1992)とされていますから注意が必要でしょう。
    精子機能検査には、ハムスターテスト・Hemizona assay(HZA)・精子核クロマチン解析・精子膨化試験・Triple-stain法・Sperm survival test(SST)などさまざまな検査がありますが、中には複雑なものもあり検査可能施設は限られているのが現状です。
    いずれにしろ、機能性不妊で治療期間が長く、男性不妊が疑われる場合は、体外受精・胚移植などの生殖補助医療(ART)の施行が望ましいでしょう。体外受精を行うことにより精子の受精能に異常がないかどうかも結果的に判定することができます。
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生殖補助医療(ART)

通常の不妊治療を行っても妊娠に至らない場合に行われる治療が生殖補助医療(ART:Assisted reproductive technology)です。やたら横文字の略語が多く複雑に感じるかもしれませんが、要するに1)精子の調製方法の違い、 2)授精方法の違い、3)胚移植方法の違いなどによりいろんな手技があると理解して下さい。

    配偶者間人工授精

    (AIH:Artificial insemination with husband's semen)生殖補助医療の中で一番簡単な方法で、精液を遠心・洗浄・濃縮することによって運動性良好精子を集め、子宮腔内に注入します。
    妊娠率の向上が期待(下表)できますから、精液検査で問題があった場合はもちろんのこと、機能性不妊でなかなか妊娠に至らない場合でも施行する価値があります。
      配偶者間人工授精の方法
      1. 排卵推定日にカップル2人に受診していただき、卵胞径やホルモン測定により適時かどうかの判断がなされます。
      2. 適時と判断された場合は、精液検査の要領で精液を採取していただきます。
      3. 洗浄・濃縮した精子(約0.5ml)を注射器に入れ、人工授精針で子宮腔内に注入します。
      4. 人工授精針
        ※濃縮精子の入った注射器が人工授精針に装着されています。

        人工授精
      5. 注入後は精子が腟へ自然流出しないように、30分ほど腰を高くして(骨盤高位)休んでいただきます。これで終了です。痛みは全くありません。もちろん麻酔も必要ありません。
      6. 感染防止のため、念のため抗生物質を内服していただきます(2日程度)。
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    AIHの有効性

    • 排卵推定日に自然の性交渉を指導した場合に比べて、AIHを施行した場合の方が妊娠率が2倍以上向上する。
    • 排卵誘発を行った場合でも、排卵推定日に自然の性交渉を指導した場合に比べて、AIHを併用した場合の方が妊娠率が2倍以上向上する。
    • 排卵推定日に自然の性交渉を指導した場合に比べて、排卵誘発を行ってAIHを併用した場合の方が妊娠率が6倍以上向上する。
    (Cochrane Library,2001)
      ただし、当然ながら両側卵管が閉塞している人では適応になりません。夫に感染症があり精液を介して妻に感染が及ぶ可能性がある場合や、妻に活動性の骨盤内感染症があり、授精により感染症の悪化の恐れのある場合も、まず感染症の治療が優先されます。人工授精は感染が落ち着いてから行います。
      AIHによる累積妊娠率は初回〜3回で向上しますが、その後は頭打ちの状態となりますので、通常5〜6回の施行にもかかわらず妊娠しない場合は、他の生殖補助医療(ART)への切り換えが考慮されます。

       配偶子卵管内移植

      GIFT:Gamete intrafallopian transfer)
      分離調製した精子と採卵により得られた卵子を受精を確認することなく、腹腔鏡下で卵管采から卵管膨大部に注入する方法です。自然の妊娠成立機序に近い妊娠であり、施設によっては体外受精より妊娠率も高いのですが、全身麻酔での腹腔鏡下処置のため手技や設備の面で煩雑であり、近年実施施設は減少傾向にあります。
      なお、同様の方法で前核期卵を移植する方法をZIFT(Zygote intrafallopian transfer)あるいはPROST(Pronuclear stage transfer)と呼び、分割期胚を移植する方法をTET(Tubal embryo transfer)またはTEST(Tubal embryo stage transfer)と呼びます。

      配偶子卵管内移植法

      配偶子卵管内移植法
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       体外受精・胚移植

      (IVF−ET:In vitro fertilization-embryo transfer)
      卵巣刺激法(COS:Controlled ovarian stimulation)により複数の良好な卵胞成熟を促し、経腟超音波下に採卵し、調製した精子と媒精することによって体外で受精させます。受精卵を子宮内に移植するのが胚移植(ET:Embryo transfer)であり、拡張期胞胚もしくはハッチング(孵化)胞胚まで長期培養後子宮内に移植するのが胚盤胞移植(BT:Blastocyst transfer)です。

      体外受精・胚移植法

      体外受精・胚移植法
      卵巣刺激法にはさまざまな方法がありますが、基本的には複数個の同調した良好な卵が採取でき、卵巣過剰刺激症候群を回避することを目的としています。GnRH agonist(GnRH作動薬:生体内のGnRHと同様の作用を持った薬)を月経1〜3日目から使用しながらhMG(FSH)を投与するShort法、GnRH agonistを前周期の黄体期中期より使用しながらhMG(FSH)を投与するLong法、hMG(FSH)で卵巣刺激を行い、卵胞発育を確認後,日本ではまだ発売されていないGnRH antagonist(GnRH拮抗薬:生体内のGnRHの作用を阻害する薬)を使用する方法などがあります。GnRH antagonistが発売になれば、卵巣過剰刺激症候群の発生頻度が低く、卵巣刺激時の使用期間も短くコストパフォーマンスの良い点で一般的な卵巣刺激法になっていくものと思われます。
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       顕微授精

      (ICSI:Intra-cytoplasmic sperm injection)
      採卵や精子の調製は体外受精の場合と同様に行いますが、第2減数分裂中期の卵をマイクロマニピュレーターという装置を用いてホールディングピペットで固定した後、インジェクションピペットを卵細胞質に刺入し、あらかじめ吸引しておいた精子を注入する方法です。受精・卵割を確認した後、体外受精の場合と同様に胚移植(ET)を行います。
      なお、卵細胞質に刺入するのではなく、卵細胞質の周囲にある囲卵腔に刺入する方法を囲卵腔精子注入法(SUZI:Subzonal insemination)と呼びます。

      顕微授精・胚移植法

      顕微授精・胚移植法
      通常の射精により精子が得られない場合は、泌尿器科により以下のような精子採取方法が行われます。いずれの場合も精子が得られた場合には、顕微授精(ICSI)との組み合わせとなります。
      精巣精子抽出法
      精巣生検を数カ所行い精巣組織ごと精細管を採取してくるconventional
      TESE(Testicular sperm extraction)と手術用顕微鏡下に精細管を観察して精子の存在する確率の高い精細管を採取する microdissection TESE があります。
      精巣上体精子吸引法
      手術用顕微鏡下に精巣上体管をマイクロピペットで穿刺し、内容液を吸引して精子を回収する方法(MESA:Microscopic epididymal sperm aspiration)です。

       胚の凍結保存および解凍胚移植

      胚移植には1度に2〜3個の胚が使用されますが、余剰胚として残された受精卵は、患者さんの希望・同意を得て凍結保存されます。
      胚の凍結保存の目的としては、
        1. 余剰胚の有効利用
        2. 多胎妊娠の回避
        3. 患者さんの身体的・金銭的負担の軽減
        4. 卵巣過剰刺激症候群の回避
      などが考えられます。初回の新鮮胚移植で目的が達せられなかった場合は、次周期以降で凍結胚を解凍して移植することができますが、自然周期で移植する場合とホルモン剤を使った人工周期で移植する場合があります。保存期間は5年間を限度とし、期限が経過した場合は、ご夫婦と再度相談のうえ、保存を継続するかどうかが決定されています。
男性の絶対不妊について
精巣がない場合は当然絶対不妊といえますが、精巣があれば顕微鏡下精巣精子抽出法 microdissection TESE を施行して精子を見出せないことがわかって初めて絶対不妊であると言う時代になってきています。つまり、そこまで生殖補助医療が進歩してきているわけです。

非配偶者間人工授精(AID)について
夫以外のドナーの精子を用いた人工授精で、全国26施設(平成15年3月現在)で行われています。現状では、AID出生児の身分についての法的措置がなく、出生児が自らの出生に関して知る権利が基本的権利として保障されていないことなど、いくつかの解決すべき法的課題が山積しています。情報開示には限界があり、精子提供者の個人情報保護の対策がない限り、今後精子提供者を確保することは難しくなるものと思われます。もっとも、生殖補助医療の進歩により、以前にはAIDしか方策がないとされていた状況に変化がみられているのも事実です。
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不育症

妊娠は成立するが流産や早産を繰り返して元気な赤ちゃんが得られない場合を不育症と呼びますが、基本的には習慣流産(3回以上の繰り返された流産)と同じと考えて下さい。

    流産の頻度

    報告により変動がありますが、流産の頻度はほぼ以下の通りです。
      1. 厚生省心身障害研究班の報告(1991〜1993年度)では、流産率は 14.9%で、そのうち約90%は妊娠12週未満の早期流産であり、残りの約10%が妊娠12週〜22週未満の後期流産であるとされています(母集団:827例)
      2. 体外受精例を対象にして、胚移植後2週間目に妊娠反応陽性(hCG: 50IU/L以上)を妊娠と定義して検討した場合、妊娠12週までの早期流産率は約20%あり、2回連続して流産の起こる反復流産率は 0.2×0.2=0.04(4%)で、さらに3回連続して流産を起こす確率は 0.04×0.2=0.008(0.8%)と推計されています
        (牧野ら、2004、母集団:単胎229・双胎115)。
      3. おおむね、既婚婦人の4人に1人は自然流産を少なくとも1回は経験し、 約1000人に1人は2回以上の反復流産を経験しているという報告もあります。
    このように自然流産は決して珍しい現象ではなく、日本では年間40万件以上の自然流産例があると推定されていますので、生殖効率からも憂慮すべき数字といえます。
    ことに、流産を繰り返している不育症のカップルにとっては、挙児希望が切実であるがゆえに、統計の数字では割り切れない深刻な悩みであるといえます。

    流産と染色体異常の関係

    流産の約60〜70%以上は胎児(胎芽)に染色体異常があると報告されています。受精卵と出生時の染色体異常の頻度を比較すると、受精卵では 約40%に染色体異常が発見されるのに対し、出生時には染色体異常の頻度が0.6%に減少しています。このことから、もし流産という自然淘汰現象が起こらなければ、生まれた赤ちゃんの40%は染色体異常を持つことになってしまいます(大濱、1992)。したがって、1〜2回の流産を起こしたからといって、すぐに病的であり不育症であるということにはならないと考えて下さい。
    ただし、不育症のカップルを対象として染色体検査を行ってみると、 約8〜10%に夫あるいは妻に異常が見出され、いずれの側に染色体異常が存在しても、その妊娠の90%以上は自然流産となってしまうと報告 (Makino et al.1990)されていますから、不育症のカップルでは夫婦そろって染色体検査を受けて、異常の有無を明らかにしておく必要があるでしょう。
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    不育症の原因と治療

    染色体異常以外の不育症の原因は下の円グラフが示すように、黄体機能不全・甲状腺機能異常 ・高プロラクチン血症、糖尿病などの内分泌異常によるものが10%、子宮奇形を含めた子宮内腔異常によるものが15%、抗リン脂質抗体症候群を含めた自己免疫によるものが20%と考えられていますが、残り45%は依然として原因不明とされ、今後の解明が待たれています。
    (牧野ら、2004)
    内分泌異常
    黄体機能不全については、流産の原因として明確になっているわけではありません。可能性としては、妊娠維持に貢献しているプロゲステロンの産生部位が妊娠黄体から絨毛(胎盤)へと移る端境期に一時的なプロゲステロンの低下が起こり流産の引き金となっていることが考えられます。
    治療としては、妊娠初期にプロゲステロンを投与したり、hCG筋注で妊娠黄体を賦活したりします。
    高プロラクチン血症についても、妊娠中はプロラクチン分泌が生理的に亢進し、妊娠前の約10倍の高値になるとされていますから、妊娠前の高プロラクチン血症が不育症とどれほど密接な関連を持つかについては不明と言わざるをえません。ただし、習慣性流産を来した女性の10〜15%に高プロラクチン血症が見つかることから、当然発見されれば治療の対象となります。
    治療としてはパーロデル・テルロン・カバサールといったドーパミン作動薬を内服することになります。
    甲状腺機能異常についても、不育症の原因として直接的な証明がなされたわけではありません。甲状腺機能低下症では二次的に高プロラクチン血症が認められることや、甲状腺疾患にはバセドー氏病や橋本病のような自己免疫疾患があることが間接的に影響しているのかもしれません。甲状腺機能亢進症があれば抗甲状腺剤が、甲状腺機能低下症があれば甲状腺ホルモン剤が投与されます。
    糖尿病については、胎児奇形の発生頻度が上昇することが知られていますから、このことが流産と関連を持っているものと思われます。糖尿病が発見された場合は、妊娠前に十分にコントロールを行い、正常化を確認してから妊娠することが大切でしょう。
    子宮内腔異常
    不育症の人では、子宮卵管造影法子宮鏡で子宮内腔に異常が発見されることがあります。発見される子宮奇形の中では、中隔といって子宮の中央に左右を仕切る壁がある奇形(中隔子宮)の流産率が一番高いとされ、中隔部分をレゼクトスコープといって子宮鏡下に切除する方法や、開腹して切除・形成する方法で治療されます。その他、子宮奇形にはいろんなタイプがありますが、弓状子宮と単頚双角子宮が手術適応となります。
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    免疫異常
    抗リン脂質抗体症候群
    リン脂質はすべての細胞膜に広く分布していて、ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールアミン・ホスファチジルイノシトール・ホスファチジルセリン・ホスファチジルグリセロール・カルジオリピンなどさまざまな種類があります。抗リン脂質抗体症候群はこれらのリン脂質あるいはリン脂質に結合する蛋白に対する抗体を有する病態なのですが、膠原病などがあって起こってくる続発性抗リン脂質抗体症候群と、このような全身疾患のないまま起こってくる原発性抗リン脂質抗体症候群とがあります。
    いずれにしろ、問題となるのは“血液凝固反応が活性化”することであり、絨毛組織(胎盤)での“血栓形成”が主病因と考えられています。この抗リン脂質抗体症候群は、不育症だけでなく、原因不明の子宮内胎児死亡・子宮内胎児発育遅延妊娠高血圧症候群とも関連があるとされています。
    検査としては、膠原病などの基礎疾患が存在することを考慮して、抗カルジオリピン抗体・抗ホスファチジルエタノールアミン抗体・ループスアンチコアグラント・抗DNA抗体・抗核抗体・免疫グロブリン・血清補体価などが測定されます。
    抗リン脂質抗体が陽性の場合は、血栓形成を予防する目的で以下のような治療が行われます。
    1. 低用量アスピリン療法
    2. バファリン1錠(81mg)を1日1錠排卵日頃より服用を開始し、妊娠28週頃まで継続して服用します。
      1. 薬局で購入するバファリンの成分はアセトアミノフェンであり代用できません。ここで用いられるのはアスピリン(アセチルサリチル酸)を成分とする製剤です。81mgというのは小児薬用量(微量)であって、大人が服用しても解熱効果が出るような量ではありません。ただし、アスピリン喘息消化性潰瘍のある人では服用できません。
      2. アスピリンは胎児や妊婦さんに比較的影響のない薬ですが、胎児動脈管早期閉鎖を引き起こす可能性が否定できないので、分娩時までの服用を避けて、通常妊娠28週頃で中止されています。
    3. ヘパリン療法
    4. 欧米ではヘパリン療法がスタンダードな治療となってきていて、通常5000単位を12時間毎に皮下注射されます。
        カプロシン0.2ml(5000単位)、皮下注・12時間毎
      1. 超音波検査で子宮内に胎嚢を確認し、子宮外妊娠の可能性を否定してから投与が開始されます。通常、バファリンと同様に妊娠28週頃に投与が中止されますが、硫酸プロタミンという拮抗剤(薬の作用を消す薬)があるので、分娩前日まで使用することも可能です。
      2. 副作用には、ヘパリン惹起性血小板減少症(発生頻度:約1%)、骨粗鬆症などがあり、定期的に副作用チェックがなされます。
      3. 出血性素因のある人には使用できません。
    5. ステロイド療法
    6. 抗リン脂質抗体価が非常に高い場合は、妊娠前よりプレドニン40mg/日を投与し、漸減しつつ抗体価の低下を確認してから妊娠を許可すべきという報告もあります。
      妊娠してからの投与であれば、通常バファリンとの併用療法がなされ、必要に応じてヘパリン療法も併用されます。
      1. 糖尿病・消化性潰瘍・感染症・緑内障・鬱病などでは使用できません。
      2. ステロイドは急に中止すると離脱症状が出るため、徐々に減量する必要があります。
      3. 妊娠初期におけるステロイド投与は、兎唇・口蓋裂の発生頻度を若干上昇させるという報告もあります。
    同種免疫異常
    胎児は母親にとって半分は自分(同じ遺伝子)であり、半分は他人(夫の遺伝子)という特殊な存在であるため、免疫学的に拒絶反応が起きないような機構が存在しています。
    保険適用ではありませんが、夫婦間のリンパ球混合培養試験やHLAタイピングが施行され、同種免疫異常について検討がなされることもあります。
    その他の原因
    感染症
    後期流産を来している場合は、頚管炎や絨毛羊膜炎が原因となることがあります。
    クラミジア感染症淋菌感染症・一般細菌(大腸菌・腸球菌・溶連菌など)による頚管炎などの感染症があれば治療を受けることが大切です。
    これらの炎症があるとサイトカインという物質が活性化され、プロスタグランディンが誘導されることにより、子宮収縮が起こったり、子宮頚管の熟化・開大をきたし、後期流産や早産となってしまいます。子宮頚管無力症の既往がある場合は、次回妊娠時に子宮頚管縫縮術を予防的に受けておくことが望ましいでしょう。