山本産婦人科(三重県津市)の不妊症に対する精液検査・精液の性状についてのページです。

不妊症の検査


精液検査

近年、不妊症の原因として男性側因子の割合が増加傾向にあり、精液検査は不妊症検査として重要かつ不可欠なものとなっています。したがって、不妊症で管理される場合は、全員の男性が例外なく受ける検査であると理解して下さい。

いつ行うのですか?

    いつ行ってもよいのですが、排卵期は検査よりも“子作り”を優先しますから、月経から排卵までの間、あるいは排卵後の黄体期に通常行われます。

何か注意点はありますか?

    1. 禁欲期間は48時間以上7日以内として下さい。
    2. 細菌学的検討を行うことがありますので、採精前には排尿を済ませ、手指・ペニスを洗浄し、雑菌の混入を避けて下さい。

どのようにすればいいのですか?

    1. プライバシーの保てる採精室にご案内いたします。
    2. 手指およびペニスを洗浄後、お渡しする滅菌済み容器に用手的に精液を採取して下さい。
    3. 精液入り容器を検査室の検体ボックスに出していただいてすべて終了です。

どのように検査し診断するのですか?

    射精直後の精液は粘稠のため、15〜60分室温で液化するのを待ってから検査を開始します。
    肉眼的観察
    液化--------- 精液の液化は前立腺から分泌されたタンパク分解酵素によって起こります。60分を経過しても液化が起こらない場合は、前立腺炎や前立腺の機能障害を考える必要があります。
    肉眼的性状--- 正常な精液は均一で灰青色をしていますが、精子濃度が低いときは透明度が高く、赤血球が混入すると茶色になります。また、感染があれば黄緑色(膿状)となることもあります。
    pH---------- 正常精液のpHは7.2以上であり、無精子症でpHが7.0未満を示す場合は、閉塞性無精子症や先天性精管欠損症などが考えられます。
    精液量------- 2.0ml以上が正常ですが、少ない場合は採精が正確に行われなかった可能性もあります。採精の問題がなければ、精管の閉塞性疾患や逆行性射精などを考える必要があります。
    顕微鏡的観察
    精子濃度・総精子数・精子運動率・精子奇形率・精子生存率・白血球数などを測定し、WHOの定めた基準値から下表のように診断されます。
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精液測定の基準値(WHO,1999)

精液量 Volume 2.0m/以上
pH   7.2以上
精液濃度 Sperm concentration 20×10/ml 以上
総精子数 Total sperm count 40×10以上
精子運動率 Motility 運動精子が50%以上、もしくは高速運動精子が25%以上(射精後60分以内)
精子奇形率 Morphology Kruger's Strict Criteria で15%以下
精子生存率 Viabilty 75%以上
白血球 White blood cells 1×10/ml 未満

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精液所見の分類(WHO,1999)

正常精液 Normozoospermia 上表の基準を満たす精液
乏精子症 Oligozoospermia 精子濃度20×10/ml 未満
精子無力症 Asthenozoospermia 運動率が上表の基準を満たさないもの
奇形精子症 Teratozoospermia 形態正常精子が
15%未満
乏精子−精子無力
−奇形精子症
Oligoasthenoteratozoospermia 精子濃度、運動率、奇形率の全てが異常
無精子症 Azoospermia 精液中に精子が存在しない
無精液症 Aspermia 精液が射精されない

精子の正常形態

  Strict Tygerberg criteria WHO(1999)
頭部 形態 平滑、卵形 卵形
  先体 頭部の40−70% 頭部の40−70%
  長径(L) 3−5μm 4.0−5.0μm
  短径(M) 2−3μm 2.5−3.5μm
  W/L 0.60−0.67 0.57−0.67
中部 長さ=1.5×頭部長径
幅<1μm、細く軸上で頭部に接着
長さ=1.5×頭部長径
幅<1μm、細く軸上で頭部に接着
尾部 長さ〜45μm、均一で捻れていない 長さ〜45μm,中部より細く真直で均一で捻れていない
カットオフ値 >14% ≧15%
境界型 異常とする 異常とする
細胞質小滴の割合 <1/2 <1/2



精子奇形率については、上表と右図を参考にして算出します。
精子の凝集
運動精子が互いに頭部・中片部・尾部のいずれかを接着している場合は、免疫性不妊が考えられます。
形態異常精子(WHO,1999)

(WHO laboratory manual, 4th ed 1999)
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精子機能検査について
精液検査では精液や精子の性状を検討しますが、必ずしも精子そのものの機能を反映するものではありません。
そこで、精子の受精能力を調べるためにハムスターテスト(透明帯除去ハムスター卵へのヒト精子侵入試験)、Hemizona assay(HZA:半切透明帯への精子接着性試験)、保存透明帯通過試験(ヒト未成熟卵由来の保存透明帯への精子通過試験)、精子膨化試験、精子核クロマチン解析(Acridine orange染色)、Triple-stain法などの特殊検査が行われることもあります。

正常精子濃度の変遷について
ここ10〜20年の間に精子濃度の正常値が変化してきています。昔は1億/ml以上であった正常値が、5000万/ml以上となり、現在では2000万/ml以上(WHO,1999)と下方修正されてきています。 これは一体何によるのでしょうか?環境汚染(環境内分泌攪乱物質)の影響なのでしょうか?男性が相対的に弱く(!?)なってきているのでしょうか?いずれにしても人類の種の保存の観点からは、将来ゆゆしき事態に発展しなければいいのですが---------。 実際、Sharpeらの報告(1993)によれば、出生前に胎内で男児が高エストロゲン環境にさらされることが、将来の性機能異常の誘因であることが示唆されてきています(下記参照)。
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過去半世紀で変化したヒトへのエストロゲン曝露の経路

エストロゲンの起源 侵入の原因 コメント
内因性 食生活の変化
体脂肪の増加
低線維食によるエストロゲンの腸内再循環の増加
肥満による肝におけるステロイドホルモン結合グロブリン(SHBG)の分泌抑制
→エストロゲンの生物活性が上昇
脂肪におけるステロイドからのエストロゲン産生の促進
合成エストロゲン剤
diethylstilbestrol(DES)
hexestrol
ethinyl oestradiol
経口避妊薬

家畜への投与
上水道内に合成エストロゲンが検出される
SHBGと結合しないので生物活性が高い
侵入経路としては最も可能性の高い経路
(1950〜1970年代)。ヨーロッパでは
1981年に使用禁止となっている。
植物 食生活の変化 多くの食物に弱いエストロゲン活性を示す物質が含まれていることが知られている:大豆が筆頭(植物性のエストロゲンはSHBG産生を促すので内因性のエストロゲンの吸収を減少させる効果もある)
他の食事原因 生鮮食品の消費 牛乳にエストロゲンが含まれている(妊娠乳牛)
エストロゲン様化学物質 1930〜1950年に
かけて生産が始まる
多くの有機塩素系化学物質に含まれる
→雨 →母乳 →
dichloro diphenyl trichloroethane
PCB
TCDD(dioxin)
ガソリンなどの燃焼産物