山本産婦人科(三重県津市)の先天異常(奇形)についてのページです。

妊娠初期の出来事

健康な赤ちゃんを産みたい!

誰もが五体満足で健やかな赤ちゃんを産みたいと願うのは当然だと思いますが、残念ながら、先天異常(奇形とか代謝等の機能異常)を持って生まれてくる赤ちゃんもいます。

おしなべて、100人の赤ちゃんの中で4人(4%)に先天異常が発見されます。医学が進歩してもこの頻度が減少するとは考えられません。むしろ、環境汚染などにより徐々に増加していくのかもしれません。
幸いなことに、たいていの異常はアザとか手足の変形などといった命にかかわることのないものが多いのですが、中にはすぐに手術をしたり、集中治療が必要となる場合もあります。

古くから、胎児奇形の発生(催奇形性)に関係する主なものとして、(1)お薬、(2)放射線、(3)感染症の3つが挙げられていますが、その影響は妊娠時期により大きく異なります。
下の図でわかるように、妊娠12週の終わり頃までが一番影響を受けやすく、器官形成の臨界期と呼ばれています。このうち、過去のサリドマイド(催眠薬の一種で、服用により手足の短縮・欠如した奇形児が出生)のデーターから、妊娠4週〜7週が一番過敏な時期で、絶対感受期と呼ぶことがあります。
注:赤い部分が感受性の強い時期です。 <ヒトの器官形成の臨界期> (Moore,KL より)
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1. お薬の影響

    過去にバルビツール系催眠薬サリドマイドの服用により、アザラシ状奇形児(フォコメリア)が生まれたことは有名ですが、現在では飲んですぐ奇形につながるようなお薬はそれほど多くありません。

    よく、「カゼ薬を飲んだのですが、大丈夫ですか?」とか、「痛み止めを飲んだのですが、大丈夫ですか?」と聞かれますが、2〜3日これらのお薬を飲んだからといって、奇形の危険性が一挙にはね上がるというわけではありません。まず、心配ないと考えて下さい
    お薬の中には、「動物実験で催奇形性が認められているので、妊婦への投与は注意すること」とただし書きがされているものもありますが、これらの場合でも、飲んだからといって、すぐに妊娠中絶が必要というわけではありません。これらの動物実験は、“大量に浴びるほど”投与したものであること、また、動物実験の結果が必ずしも人間にあてはまらないことを知っておくべきでしょう。かりに奇形の可能性が増大したとしても、ごくわずか(おそらく1〜2%以内)であろうと考えられます。
    ただし、妊娠前から持病があり、お薬を飲んでいる人は、診察の時に申し出て下さい。なかには、服薬量を調節したほうがよいものがあります。たとえば、抗てんかん剤ステロイド剤は注意した方がよいでしょう。

    ビタミン剤は“身体によい”と思われがちですが、ビタミンAに催奇形性があることをご存知でしょうか?常用量では何ら問題はありませんが、ガバガバ飲むのはやめましょう。

ご主人のお薬
    お薬によっては、精子の受精能に影響をおよぼすものがありますが、奇形発生については、影響がないと考えてよいでしょう。
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2. 放射線の影響

    チェルノブイリの原発事故のような大量被曝が問題となるのであって、医療で用いられる通常のレントゲン検査では奇形は発生しないと考えてよいでしょう。
    歯医者さんで撮ったレントゲン・健康診断で受けた胸のレントゲンなどは全く問題はありません。
    ただし、骨盤部にある程度の放射線被曝を受けた妊婦さんの場合、生まれてきたお子さんが将来白血病になる可能性が少し増えるのではないかとする報告もありますので、骨盤部CT検査(放射線量:100ミリグレイ程度)は妊娠中や妊娠している可能性がある場合には、避けたほうがよいでしょう。最近では、内科でも前もって妊娠反応をチェックするようですからご心配なく。
    “お薬を飲まなくても・レントゲンを浴びなくても”妊婦さんには4%の確率で先天異常児を産む可能性があり、全員が平等にリスクを負っています。
    残りの96%の人では何ら問題がないわけですから、あまり神経質にならずにおおらかな気持ちで過ごしましょう

母体年齢の影響
    ダウン症候群って聞いたことがあると思いますが、お母さんが高齢になればなるほど、このダウン症候群のような染色体異常をもった赤ちゃんの出生率が上がることが知られています。
    年齢(才)   リスク値 年齢(才)   リスク値
    20   1/1177 33   1/442
    21   1/1161 34   1/365
    22   1/1140 35   1/295
    23   1/1114 36   1/236
    24   1/1081 37   1/186
    25   1/1040 38   1/145
    26   1/990 39   1/112
    27   1/930 40   1/86
    28   1/861 41   1/66
    29   1/784 42   1/50
    30   1/700 43   1/38
    31   1/613 44   1/28
    32   1/526 45   1/21
    (資料:米国データ)

    表の読み方: 20歳のお母さんがダウン症候群胎児を妊娠している確率は1,177分の1、あるいは1,177のうち1人がダウン症候群ですが、残り1,176人はダウン症候群胎児ではないことを示しています。45歳では21分の1、つまり21人のうち1人がダウン症候群で残り20人がダウン症候群ではありません。
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3. 感染症の影響

    風疹の影響が一番よく知られています。学童期にワクチン接種が行われるようになり、抗体の保有率が向上していますが、依然、妊婦さんの10人に1人が抗体を持たず、風疹にかかる危険性があるのが現状です。この原因は、一部の学年では、ワクチン接種がなされなかったこと(昭和54年〜62年生まれの人の約半数)と、ワクチンを打っていても免疫ができなかったり、できていてもいつの間にか下がってしまうことによるとされています。また、以前は風疹は終生免疫といって、一度かかったら二度とかからないと考えられてきましたが、必ずしもそうではなく、再感染することが知られてきていますので、注意が必要です。
    できればブライダル・チェックとして、結婚前後に抗体検査を受け、抗体がないか抵抗体価(16倍以下)の場合は、ワクチン接種により免疫を獲得しておいた方がよいでしょう。なお、風疹ワクチンは生ワクチンなので、接種時期は月経期間中であり、2〜3ヶ月間の避妊が必要となります。抗体がないからといって妊娠中にワクチンを接種することはありません。

    風疹にかかると重複奇形といって図のような複数の奇形が発見されます。
    妊娠時期が早ければ早いほど重症度が上がるとされていますが、妊娠12週(器官形成の臨界期)をこえても難聴の危険性は残るとも言われています。

    (Cooper.L.Z. より)

    胎児奇形に関係する感染症としては、風疹以外にトキソプラズマサイトメガロウイルス感染症コクサッキーウイルス感染症りんご病などがありますが、感染が心配な時は、受診時にお尋ね下さい。
    なお、はしかおたふくかぜインフルエンザなどは胎児奇形を起こさないとされています。